国立天文台の新天文学用スパコン「アテルイIII」始動! “理論の望遠鏡”で何が見える?
マイナビニュース / 2025年1月17日 19時57分
国立天文台では、望遠鏡と並ぶ重要な設備と位置付け、「理論の望遠鏡」、「宇宙を描く望遠鏡」と称している。
シミュレーション天文学の特徴は、望遠鏡では見えない宇宙が見られることにある。物理法則をプログラム言語にして、コンピューターに理解できる形で書くことで、コンピューターの中でさまざまな天体現象を再現できる。これにより、ある理論が正しいかどうかをシミュレーションによって確かめる「検証」や、いろんな前提や条件で何が起こるかをシミュレーションで実験して見つける「発見」ができる。
この特徴は、「解けない問題」に対して大きな威力を発揮する。たとえば、地球が太陽のまわりをどう回っているかを考えたとき、太陽と地球の2つの天体だけが重力で引き合っていると考えれば、答えは数式で簡単に導き出せる。しかし、そこに3つめの天体が関わってきたとき、数式では答えは出せなくなる。いわゆる「三体問題」である。
ただ、これは「答えがない」ということではなく、「既知の数式、関数で書けない」というだけで、「明日、地球はどの位置にあるか? その次の日は? 」といった、時刻を決めてある場所を求めていくような数値解を求めることはできる。
実際には、太陽系における惑星の形成の過程などを考えるときには、計算する天体の数は3体ではなく、億単位の数になる。そんな複雑な計算にとって、スパコンは不可欠となる。
さらに、実験条件を変えられることも大きな特徴である。たとえば惑星が作られる過程をシミュレーションする際には、もととなる材料を変えたり、作られる場所を変えたりといった、前提や条件を自由に変えて実験や研究ができる。
●性能が大幅に向上したアテルイIII、その工夫と研究への期待
アテルイIIIのシステム
アテルイIIIは、スカラ型並列計算機のHPE Cray XD2000(水冷式)システムで、1.99Pflpsの総理論演算性能をもち、288ノード、3万2256コアとなっている。
スカラ型並列計算機とは、汎用のCPUを大規模に並列接続することによって構成されるスパコンのことで、先代のアテルイIIなども同様だった。
一方、アテルイIIと大きく異なるのは、「システムM」と「システムP」の2つのシステムから構成されている点である。
○システムM
システムMには、IntelのHPC向けCPU「Xeon MAX」を使っている。メモリーバンド幅が大きいことが特徴で、アテルイIIの12.5倍の3.2TB/s(1ノードあたり)の性能をもっている。これにより、データの転送能力と計算する力のバランスが優れているという。
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