国立天文台の新天文学用スパコン「アテルイIII」始動! “理論の望遠鏡”で何が見える?
マイナビニュース / 2025年1月17日 19時57分
さらに、冷却にも工夫がある。前述のように、アテルイIIIをはじめ、歴代のスパコンが水沢キャンパスに置かれた理由のひとつに、気温が涼しく冷却効率が高くできるということがあった。それでも、計算やデータのやり取りをする中で膨大な熱が生まれる。
このため、多くのスパコンでは、CPUやストレージ、メモリーに配管を這わせ、液体を流して冷却しているが、これだけでは発生する熱の7割程度しか取り除けないという。
そこでアテルイIIIでは、残りの3割の熱を取り除くため、筐体の前面にも液体を流し、そこを通じて空気を取り込んで、背面から排出する、ラジエーターのような仕組みがある。実際、稼働中のアテルイIIIから排出される風は、少し涼しいくらいだった。この最先端の冷却システムにより、優れた計算能力を発揮し続けることができるという。
また、アテルイIIIの筐体はLEDで光るようになっているが、単にデザイン性だけでなく、冷却システムの動きに合わせて色が変わる仕組みになっている。これにより、システム全体の状態をわかりやすく示し、正常に動いているかを簡単に確認できる。また、配管やポンプに問題が起きた際には、その箇所を一目で識別できるようにもなっている。
アテルイIIIへの期待
アテルイIIIを使って、どんな研究ができ、どんなことがわかるのだろうか。
小久保教授は、「私は太陽系の構造の起源の研究に、非常に興味があります」と語る。
「太陽系にある木星と土星という大きな2つの惑星は、あの大きさでいまの場所にあることが、いまの太陽系の形を決めたと考えられています。ではなぜ、あそこにこの2つができたのか、どうやってできたのか、そしてそのあと、一体どうやってこの太陽系を形作ったのかを、正面から調べたい。木星と土星の形成をアテルイIIIでシミュレーションし、太陽系の形の起源に迫りたいと考えています」。
そして、「天文学の目的は、ひとつは『宇宙を支配する物理法則を解明する』こと、もうひとつは『我々はどこから来たのか、我々は何者か、我々はどこへ行くのかという問いに対して、天文学的、物理学的に答える』ことにあると思います。宇宙のビッグバンから始まって今に至る中で、物質がどうやって変わりながらきているかということを、宇宙全体の進化の中で理解するというのは、天文学の非常に重要な役割だと考えています」と語った。
また、CfCAの滝脇知也(たきわき・ともや)准教授は、「超新星爆発の機構、つまり星がどうやって生まれて、どうやって死ぬのかを解き明かしたいです」と語った。
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