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「若者は年金がもらえない」は本当か - 明治安田総合研究所が考察

マイナビニュース / 2025年1月28日 15時31分

また、公的年金には将来の給付水準を下支えするためのバッファーとして積立金があるが、これは過去の保険料から給付に回らなかったものが運用されて増大したものである。そのため、前の世代から将来世代への給付と見ることもできなくはない。賦課方式ではなく、積立方式で運営すべきとの意見もある。しかしながら、積立方式にも運用リスクはあるほか、移行期間中は将来の自身の年金資金を積み立てるとともに、現在の受給者への保険料支払いが必要とり、「二重の負担」が生じる。また、賦課方式は、現役世代の賃金が財源となるため、インフレが生じても賃金が上昇すれば、それに応じた年金が受け取れるが、積立方式にはそうした仕組みがないため、インフレの影響をより大きく受けてしまう。そもそも年金受給者が、現役世代の生産する財・サービスを消費するという構造は賦課方式でも積立方式でも変わらないため、少子高齢化の影響を受ける賦課方式の問題点が完全に解決するわけではない。
○長生きリスクが顕在化してからでは遅い

公的年金が「保険」である以上、老齢や障害などのリスクに備えるためのものであり、金銭的な損得のみを基準とすることは適当ではないと考える。もちろん、年金制度に全く問題がないわけではない。例えば、財政検証では「過去30年投影ケース」における長期の経済前提として、実質賃金上昇率を+0.5%に設定しているが、実績は2001~2022年度平均で▲0.3%となっており、甘さがある点は否めない。1974年度生まれにかけて平均年金月額が減少するのは、デフレ下におけるマクロ経済スライドの適用を見送ったことでこれまでの受給者の給付水準を引き下げることが出来なかった影響も大きい。

ただ、年金制度に依存せず、保険料を引き下げれば現在の可処分所得は増加するが、将来の自己負担も増す可能性が高い。現在と将来のどちらを優先するかは個々人の価値判断だが、公的年金は健康保険と異なり、支払いから給付を受けるまでの時間軸が長く、恩恵を実感しにくい点が不信感を募らせる要因になっているようにも思える。想定以上に長生きすることで老後のために蓄えた資金が足りなくなり、生活が困窮するリスクは顕在化してから対応するのでは遅きに失する。

ここ最近は国民負担率の上昇などに伴い、公的年金制度に限らず、社会インフラ全般の価値を軽視する風潮が出てきているように感じられる。公的年金制度は不信感が募れば募るほど保険料の未納者が増えるなど上手く機能しなくなる。「ねんきん定期便」や「公的年金シミュレーター」、各種資料の整備など厚生労働省による年金に関する情報提供体制は整備されてきているものの、不信感はいまだ払拭できていない。個人の自助努力によって資産形成するほかないというのもiDeCoやNISAが盛り上がりを見せている理由のひとつだが、公的年金は高齢期の所得を保障するうえで柱としての役割を果たすものである。制度に対する正しい理解を促すためにも、将来世代の年金教育を含めた広報の強化が必要だと言える。
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