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「宇宙を作る」シミュレーション天文学への招待 第1回 第3の天文学である「シミュレーション天文学」とは?

マイナビニュース / 2025年1月31日 7時1分

画像提供:マイナビニュース

国立天文台(NAOJ)は1月24日、第30回「科学記者のための天文学レクチャー」として、「スーパーコンピュータが描く宇宙―アテルイIIからアテルイIIIへ―」を開催。これまで、研究者を対象に天文学の研究専用のスーパーコンピュータ(スパコン)としてシミュレーション天文学を支えてきた「アテルイII(ツー)」の業績と、2024年12月2日より、岩手県奥州市のNAOJ 水沢キャンパスにて本格運用を開始した後継機「アテルイIII(スリー)」の特徴や、同機で現在進められている最新の研究などが紹介された。

本連載では4回にわたり、「“第3の天文学”であるシミュレーション天文学とは何か」、「アテルイIIIの特性とその目指すサイエンスのゴール」、そして天文シミュレーションの具体的な研究分野として、「太陽黒点と太陽フレアに関して」と、「天の川銀河がどのように形成されてきたのかに関して」の計4回をお届けする。今回は1回目と言うことで、アテルイIIやアテルイIIIの活躍の場であるシミュレーション天文学について紹介していく。レクチャーにおいて登壇したのは、NAOJ 天文シミュレーションプロジェクト(CfCA)のプロジェクト長を務める小久保英一郎教授だ。

○観測と理論を越える可能性を持つ“シミュレーション”

天文学の目的には、大別して「宇宙を支配する物理法則を解明する」と、「宇宙の過去から現在までを宇宙観として描く」という2つがある。それを実現するため、天文学においては紀元前から研究者が自らの目や望遠鏡をツールとした「観測」と、紙と鉛筆と研究者の頭脳をツールとして宇宙の物理を考える「理論」という2大ジャンルの研究が続けられてきた。そして20世紀末ごろにコンピュータの高性能化により誕生したのが、コンピュータの中に宇宙を再現し、現実には観測が不可能な距離的スケール・時間的スケールでの模擬実験を行い、理論の正しさを実証したり、新たな発見をしたりする「シミュレーション(模擬実験)天文学」だ。

たとえば、さまざまな観測手段を用いても、太陽の中でどのような物理現象が起きているのかを中心部まで見通すことは、現在の技術では不可能だ。しかし、そうした観測不能なものであっても、シミュレーション天文学であれば、理論があれば数値計算を用いてそれらを模擬でき、その結果が観測結果と一致するのであれば、その理論は正しい可能性があるとされる。つまり、理論と観測をつなぐ重要な役割ともいえる。このように、シミュレーション天文学は現代天文学において、なくてはならない重要な第3の分野なのだ。

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