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「宇宙を作る」シミュレーション天文学への招待 第1回 第3の天文学である「シミュレーション天文学」とは?

マイナビニュース / 2025年1月31日 7時1分

シミュレーション天文学は非常に有効であることから、現在では世界中の研究者たちが有効な研究手段として活用している。しかしNAOJのように、シミュレーション天文学のためだけに利用できる専用のスパコンを運用している天文系の研究機関は世界にも類を見ないという。

シミュレーションによるメリットは、3次元空間と時間発展を通して宇宙を理解でき、なおかつ実験条件の変更が容易なこと。その種類としては、大別して「重力多体」「流体」「放射輸送」の3つ、もしくはそれらの組み合わせの場合がある。

重力多体シミュレーションとは、重力で引き合う多数の粒子(その粒子が惑星や恒星の場合もある)の振る舞いを扱うものだ。太陽系のような惑星系から始まって、星団や銀河、宇宙の大規模構造などまでが対象である。次の流体シミュレーションは、ガスの振る舞いを扱うもの。超大質量ブラックホールの周囲にある降着円盤や、星が生まれる星間雲、超新星爆発時の大質量星内部の物質の動きと周囲に放出された物質の動き、さらには星の内部に関する研究なども含まれる。そして放射輸送シミュレーションは、光やエネルギーの伝わり方を扱うもので、これもまた降着円盤や星間雲、超新星爆発、星の内部での核融合で生じたエネルギーの伝わり方などが対象だ。それらを題材に、時間的には秒単位(場合によってはもっと短い場合も)から、宇宙の年齢の約138億年までを扱えるのが、シミュレーション天文学の最大の特徴といえるだろう。

○シミュレーションの限界を引き上げるスパコン「アテルイ」

一方で、シミュレーション天文学でも難しい部分もあり、現実の宇宙は、方程式では容易に答えを出せない現象も多いことが影響している。たとえば、太陽と地球、地球と月など、2つの天体の軌道を扱う場合は比較的容易だ。問題なのは、太陽と地球と木星など、3つ以上の天体を扱う場合である。いわゆる「3体問題」と呼ばれるもので、天体が1つ増えるだけで、とても複雑になる。

そのため実際のシミュレーションにおいては、地球軌道を極めて正確に模擬する場合は、無視できないレベルで重力的に影響を与えてくるすべての天体からのその影響を反映させている。これが、重力多体問題だ。太陽や月に加え、すぐ内側と外側の軌道を巡る金星や火星、さらには太陽系最大の木星など、いくつもの天体を考慮する必要はある。こうした影響をすべて考慮した運動をシンプルに1つの方程式で表すのは困難なため、すべての影響を考慮した上で一定時間ごとの位置を数値計算で導き出して積み重ねているが、扱う天体の数が多ければ多いほど、さらに複雑になっていく。

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