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「宇宙を作る」シミュレーション天文学への招待 第2回 アテルイIIIの特性とその目指すサイエンスのゴールとは?

マイナビニュース / 2025年2月3日 7時1分

画像提供:マイナビニュース

国立天文台(NAOJ)は、第30回「科学記者のための天文学レクチャー」を開催した。そのテーマは、「スーパーコンピュータが描く宇宙―アテルイIIからアテルイIIIへ―」。これまで、研究者を対象に天文学の研究専用のスーパーコンピュータとしてシミュレーション天文学を支えてきた「アテルイII(ツー)」の業績と、2024年12月2日より、岩手県奥州市のNAOJ 水沢キャンパスにて本格運用を開始した後継機「アテルイIII(スリー)」の特徴や、同機で現在進められている最新の研究などが紹介された。

ここでは、その取材をもとに全4回のシリーズでお届けする。第2回となる今回は、NAOJ 天文シミュレーションプロジェクト(CfCA)の滝脇知也准教授による解説「アテルイIIIの特性とサイエンスゴール」をもとに、アテルイIIIの特徴、アテルイIIとの性能比較、そして同機を用いた最新のシミュレーション結果を紹介する。

○理論演算性能は劣るのに計算時間は短縮されたのはなぜ?

天文学は、紀元前より長らく観測と理論の2大分野によって発展してきた。そして20世紀末ごろになってコンピュータの性能が向上してきた結果、第3の分野として“シミュレーション天文学”が登場。NAOJは、その頃からシミュレーション天文学に力を入れている、世界でも類を見ない天文学専用のスパコンを運用している研究機関。そして、そのようなNAOJにおいてシミュレーション天文学を担当している部門が、CfCAである。

アテルイシリーズの初代が登場したのは2013年4月のことで(2014年9月に大規模アップグレードを実施)、2代目の「アテルイII」は2018年4月に登場(2024年8月まで稼働)。アテルイIIIは、型番にNS-06とあるように、NAOJが運用するスパコンとしては通算6代目となる。その名称は、奈良時代の終わりから平安時代の初め(約1200年前)にかけて、現在の水沢付近に暮らしていた蝦夷の首長である「阿弖流為」にちなむ。朝廷の大規模な軍事遠征に対し、少数の蝦夷をまとめて勇敢に戦った人物であり、アテルイもその英雄のように大宇宙の真実に果敢に迫ってほしい、という思いが込められている。

アテルイIIIは、スパコンのタイプとしては、汎用のCPUを大規模に並列接続することによって構成される「スカラ型並列計算機」で、搭載CPUの性能を示す総理論演算性能は1.99Pflops、つまり1秒間に約1990兆回の浮動小数点演算を実行可能な実力を持つ。その最大の特徴は、特性の大きく異なる2種類のスパコンで構成されている点で、その2つとはメモリ転送バンド幅の広さを重視した「システムM」と、メモリの容量を重視した「システムP」である(総理論演算性能は、両システムの理論演算性能の合計を指す)。詳しいスペックは以下の通り。また、比較のためにアテルイIIのスペックも掲載した。

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