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tofubeats『STAKEHOLDER』インタビュー

NeoL / 2015年4月1日 19時54分

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tofubeats『STAKEHOLDER』インタビュー

J-POPクリエイター/ポップ・メイカーとしての側面を強く形にした、森高千里を迎えた“ Don't Stop The Music”や、藤井隆を迎えた“ディスコの神様”を、メジャー進出以降、EPとして形にしてきたtofubeats。その結実を昨年10月リリースのアルバム「First Album」として作品にした訳だが、そこから次のステップとなる3rd EP「STAKEHOLDER」は、そういった一連の動きで培われたポップ・メイカーの才に加えて、彼自身のエゴとも言える部分をクリエイションの中心にした作品となって完成した。


 ある意味では、分かりやすいサービス精神のような部分は、これまでのメジャー作品よりは、やや弱まっているかも知れない。しかし、今作の中で明らかになる、彼の現在進行形であるサウンドの視点や立ち位置は、これからのtofubeats作品の指針になるような部分を様々な部分ではらみ、「この先への視点」と「彼の進化」を作品を通して明らかにした作品と言えるだろう。


 上記のような意味での、彼のエゴや内面も投影したのかと思わされる“STAKEHOLDER”のMVや、洒落てはいるがどこか胸の奥がざわつくようなジャケット写真への意図も含めて、今作への思いを伺った。


 

 

——2013年11月のメジャー進出以降は、2枚のEP、アルバムとリミックス・アルバムを一枚ずつ、シングル“Come On Honey! feat.新井ひとみ(東京女子流) ”のリリースと、アクティヴなリリースを展開されて。


tofubeats「我ながら多作やなあと思いますね。でも、その中でも、今回は今までよりも肩の力が抜いて作れたと思いますね。イベントとかも抑えて制作したのは、今までのキャリアでも初めてぐらいだったんで。それが良い感じに作品に反映してくれたかなって」


——昨年は自身のリリースに加えて、森高千里とのコラボ作「森高豆腐」のリリースなど、かなり押せ押せな感じだったと思うんだけど。


tofubeats「やっぱりプレッシャーもあったし、『頑張らなきゃ!』って気持ちで自分を追い込んでる部分もあって。それもあってか、去年の年末にちょっとガタが来ちゃって、少しペース配分は考えた方がいいかなと思ってた時に、レーベルからも『次は単純に好きな事だけやった作品を作ろうか』って言ってもらって。そういうタイミングで出来たのが、今回の作品かなって。だから、頑張らなきゃ!じゃなくて、頑張りますか、ってテンションで作れたんですよね」


——そのせいか、今作は全体のトーンとして、tofuくんがインディやフリー・ダウンロードでやっていた事の延長線上にあるっていう感触があって。


tofubeats「メジャーではこういった部分を形にしてこなかったから、自分としてもエゴの部分を出したって感じでもありますね。右か左かで言ったら、左の部分を出したというか」


——保守性の逆の、革新性のような部分という意味?


tofubeats「『お約束の逆』をやろうって感じでしたね。だから、ポップ・ミュージックなんだけど、ヴォーカルのバランスをもうちょっと抑えめにしたり。今回は基本的に僕が歌ってるんで、例えば藤井さんとか森高さんと一緒に作るように、ヴォーカルを前に出すんじゃなくて、もっと引っ込めたり切り刻んだり、雑に使っていいかなって。僕の歌なんて、っていう(笑)」



——今作のリードである“STAKEHOLDER”は、スゴくシンプルな歌詞になっているし、歌詞の分量自体が少ないよね。


tofubeats「インストだと味気ないけど、フル尺だとちょっと味付けが濃いかなって。それで、これぐらいの分量とバランスの歌詞になって」


——例えば、インディの時の「朝が来るまで終わること無いダンスを」もこれぐらいの分量だったから、あの曲と意識としては近いのかなって。


tofubeats「それをメジャーではやってなかったんで、今回はそれをやってみたというか。ただ、サウンド的には地味に思われそうな曲なので、歌詞と歌は必要かなとも思ったんですよね」


——ヴォーカルと歌詞が乗ることで、ポップ・ソングとしての部分を担保するというか。


tofubeats「これぐらいの歌詞の量だったり、極端に言えばインストでも、今年ぐらいからは、もう大丈夫なのかなっていうイメージもあったんですよね。その確認をこの曲でしたかったという部分もありますね」


——世界的に見ても、ポップスとの親和性を感じるような、こういったタイプの曲がクラブ・ミュージックの中でも注目されてるし。


tofubeats「いわゆるフューチャー・ベースとか」


——そういった流れの上にあるのかなって。


tofubeats「意識もしてますね。そういうトレンドを、J-POPが最近はあまり注目してないとも思って。今年、どんどんJ-POPがお約束になってて、大メジャーで言えば、三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBEの“R.Y.U.S.E.I.”ぐらいしか、世界的なサウンドのトレンドと、J-POPを上手く折衝してる曲がないなって。でも、一方であの曲がメジャーでリリースされるってことは、EDMが本格的に受容されてきてるってことだし、それなら、その先のサウンドを形にしても大丈夫なのかなって」


——“STAKEHOLDER”がそういった仕立てになっている一方、“window”も同じダンス・ビートでありながら、こちらの歌詞は英語を使わない、J-POP以前の歌謡曲とも近いような、しっかりした「歌詞」になってるのが興味深くて。


tofubeats「こういったタイプのサウンドに、フル・コーラスで日本語が載せられたのは、自分としても驚きましたね。その意味でも『他にあまりない曲』を出来たと思いますね。それはこのEPの他の収録曲と同じように。この曲に関して言えば、こういうビートって、英語だとすんなり歌詞が乗るんですよね、やっぱり。でもポップスを、J-POPを作る以上、『日本語で曲を作る』という部分は、やっぱり考えざるをえないし、こういったタイプの曲に、日本語ですんなり歌詞が乗った時はやっぱり嬉しい。先人たちの頑張りの上に繋がれたかなって思えるんですよね。『日本語と曲とのいい関係』を、自分でも発明できればいいなっていうのは、考えることですね。でも、こうやってフル・コーラス乗ることは稀ですね。“STAKEHOLDER”みたいになる方が普通ですから」


——この曲や、昨月にlyrical schoolのアルバム「SPOT」に提供した“夢で逢いたいね”など、最近のtofuくんの歌詞は、ホントにエモーショナルで素晴らしいと感じていて。


tofubeats「でも、頑張って書いてるだけですね。音と言葉のはめ方だったり、物事をどう表現するかを普通に考えるぐらいで、でも歌詞の温度感は考えてますね。自分が書くのにふさわしい温度っていうか」


——“dance to the beat to the”と“STAKEHOLDER -for DJ-”は、ほぼ歌詞のないフロア仕様の曲だけども。


tofubeats「“dance to the beat to the”はJ-POPっぽく転調してるんですよね。ガチャガチャと変わるっていうか」


——だから、同じシーケンスのトラックがループするような、いわゆるダンス・ビートではなくて、実はシーケンスごとにその内容が細かく変化をしていて。その意味では、ダンス・ミュージックよりも、J-POPやポップスに構造としては近くて。


tofubeats「いびつな感じですよね。こういうプログレッションのある展開をJ-POPで学んだんで、それをダンス・ビートにフィード・バックさせた感じですね」


——だから、アシッド・ベースの部分が、同じシーケンスとモチーフなんだけど、バグとエフェクトで音色が変化していく“(I WANNA)HOLD”とは、構造が違うのが面白いなって。


tofubeats「“(I WANNA)HOLD”はモロにシカゴ・ハウスをやりたかったんですよね」


——シカゴ・ハウス/アシッドハウスを形にしたのは?


tofubeats「DJでは昔からずっと掛けてたのに、よく考えたらメジャーでは作ってないなって。今回は自分がもともと好きで、それでもメジャーでやってなかったことを形にしようというイメージがあったので、この曲を作って。でも、中後半は、おしゃれコードのピアノが入ったりして、乙女ハウスとか、DJ KAWASAKIさんとか好きだった部分も込めようと」


——“STAKEHOLDER -for DJ-”は、タイトル通り“STAKEHOLDER”のモチーフをよりフロア対応にした一曲だけど。


tofubeats「サンプリングをやりたかったんですよね。ただ、メジャーでは権利の問題で難しいので、その欲を満たすために、“STAKEHOLDER”をサンプリングして、よりダンス・ビートに持っていったんですよね。“STAKEHOLDER”自体がクラブ・サウンドではあるけども、DJとしてはプレイしにくい構造になってるんで、このバージョンでは、よりクラブ対応、DJ対応に作りかえて」


——“She Talks At Night”はとにかくベースが唸ってる曲で。


tofubeats「ベースを響かせたかっただけっていう(笑)。サビがベースみたいな曲は、さすがに森高さんとは出来ないんで、自分のボーカルでやってみた感じですね」



——okadadaくんとのユニット:dancinthruthenightsでの“T.D.M. feat. okadada”はディスコ路線で、これはtofuくんのメジャーでの動きに沿った部分も感じさせて。


tofubeats「KISSの“Beth”っていう曲があって、レコーディングで帰れない事を恋人に詫びるっていう、めっちゃかわいい曲なんですよね。その後にライヴで火ぃ吹いたりしてるんですけど(笑)。その雰囲気を、dancinthruthenightsで形にしようとした曲ですね。このEPの中でも、攻めるというよりは、安定感のある曲になったし、一番キャッチーだと思いますね。ラジオでかかりやすい(笑)」


——EPはバラード“衛星都市”で終わるけども。


tofubeats「バラードなんだけど、『いびつな』サウンドで作りたいなって」


——メロやトーンとしてはポップなんだけど、ドラムやブレイクビーツがスゴくラグドな感じになってて。


tofubeats「ブレイクビーツもサンプリングではなく、自分で作ってるんですよね。ドラム抜いたら普通のポップスになるんだけど、それとはちょっと違うモノを作りたくて。これは“衣替え feat. Bonnie Pink”と同じように、のちのちは女性が歌うってことも考えてるんですよね。だから、アルバムでは信じられないぐらい、綺麗なものにしよかなって」


——全体として、DJミックス的な意味では無くて、「感覚」や「空気感」みたいな部分が、曲ごとに繋がってる感じを受けて。


tofubeats「今回は制作の時に肩肘張ってないから、雰囲気が揃ったと思いますね。ホームランや長打を狙うんじゃなくて、しっかりと内野安打、二塁打位を目指してたんで、自分でもしっくり来てますね。今回の制作はほぼ自分のスタジオで作ったし、サウンド部分の制作に関わったのは、okadadaさんとマスタリングエンジニアさんだけっていう、それぐらいミニマムな形なんですよね。だから自分の思い通りに形作れる部分も強くて。今回で一番お金をかけたのは、ジャケット写真のモデルさんですからね(笑)」


——tofuくんが外国人家族の中にいるっていう、ジャケット写真がなかなかゾワッとする感じになったのは?


tofubeats「アメリカのホーム・コメディっぽい感じっていうのがテーマなんで、コンセプト自体は異常じゃないんですよ。最終的な写真のセレクトは異常だと思いますけど(笑)。でも、デザインを担当したスケブリは、このCDを指すときに『家族のCD』って言えるように、っていうのは考えたって言ってましたね」


——背表紙の部分のtofuくんの笑顔も……。


tofubeats「はっきり言えばいいじゃないですか、背表紙が完全にサイコパスな感じで、相当気持ち悪いのは認めますよ(笑)。写真を撮ってる時は、違和感がなかったんだけど、完成品になった時に『怖っ!』みたいな(笑)。アートワークは、狂気をぐっとまとめた感じになってますね。これじゃ買い辛いかなとも思うんですけど、でもぱっと見、渋谷系っぽくない?って思うんですよね」


——EL-MALOの「SUPER HEART GNOME」の笑顔なのにゾワッとするジャケ写もちょっと思い出すかも。


tofubeats「そういう渋谷系のダーク・サイドのエッセンスが入ってるんですよね(笑)。あと、スケブリが石野卓球さんの高校の後輩なんですよ。そこで培われたであろう、ヴァイブスを受け継いでるかも知れないな、と。“STAKEHOLDER”のMVも、嫌なカットの集積じゃないですか」


——ビンタされたり、パソコン壊されたり、ポテトチップを食べた指でメガネのレンズを触られたり。そういう短く細かい嫌がらせがどんどん集積していくという。


tofubeats「僕はこの曲を聴いてると、自動車の安全性確認実験の映像しか浮かんでこなかったんですよね」


——車がクラッシュした瞬間に、乗ってるダミー人形がどんな動きをするのか、スローモーションで録ってるやつ?


tofubeats「そうそう(笑)。この曲を作りながらYouTubeでその映像を見てたら、スゴくしっくりハマったんですよ」


——……なんか病んでない?(笑)


tofubeats「いやいや。縁起は悪いけど、純粋に映像として格好いいなと思って」


——そのダミー人形役が今回は自分だったと。


tofubeats「石野卓球さんのMV(“Polynasia”)でもマンションがガス爆発で終わるっていうのがあったんで、それぐらいやってもいいかなと」


——家族が爆発で吹っ飛ぶ瞬間の顔を超スローモーションにしてるやつ。あれも異常だったけど、その精神を引き継いでるのか……。自分が写ってる鏡を壊されるとか、地味にメンタルにくるのもあれば、ビール瓶で頭かち割られるような、派手なシークエンスもあって。でも、それはtofubeatsのパブリック・イメージとしては大丈夫なのかなとも思ったんだけど。


tofubeats「女の子に瓶で殴られるのは僕の強い希望ですね(笑)。でも、自分の中の危ない部分を認識してますからね。だから生理的にゾワゾワする感じを出させたら世界レベルっていう、スケブリ師匠の世界観が、自分の世界観とフィットしたのかも知れない」


——そうやって、自分の中の狂気を客観視出来てると。


tofubeats「そう僕には接してくれればいいと思いますね」


——そんなイメージ嫌だよ!


tofubeats「あいつは何するかわからないって(笑)。でも、そうやってパブリック・イメージを壊したいって気持ちもあるんですよね。そんなに清廉潔白な人間やないですよって」


——最終的なオチとしては、可愛い子とすれ違った瞬間に浮かんだ妄想だったという、より屈折した内容で。まだ若いのに心配ですよ、性癖が(笑)。ともあれ、このEPを完成させてからの展開は?


tofubeats「“STAKEHOLDER”をみんな受け入れてくれたんで、そこはちょっと安心しましたね。これが滑ったら、自分はJ-POPの部分を走らせるしか無いのかなって思ってたんで、この曲が受容された事で、別の部分も走らせても大丈夫なんだなって」


——藤井さんや森高さんとの作品はJ-POPのクリエイターとしてのプレゼンだとしたら、今作はもっとサウンドとして別の角度のプレゼンを形にしたし、それが受け入れられれば、いろんな角度から作品作りがチャレンジ出来ると。


tofubeats「EPがリリースされて、全体としてどういう評価をされるのかが、一番楽しみですね。今年はアイドルが一段落して、J-POPも落ち着くと思うんで、『これだったらウケる』っていうお約束が、無くなる年になるのかなと思うんですよね。だから『その先』が今年始まると思うし、好きなことをやれるっぽいな。そこでどう評価されるかに興味があるし、自分としても面白いものを作っていきたいなって思いますね」




文 高木”JET"晋一郎/text  Shinichiro "JET" Takagi


 


tofubeats_present

プレゼント:tofubeatsサイン入りポスターを1名様にプレゼントします。


空メールを送信するとプレゼントに応募できます。(←クリック)


ご応募お待ちしております。
後日当選された方にはいただいたメールアドレス宛にNeoL編集部よりご連絡させていただきます。


tofubeats_stakeholder


tofubeats『STAKEHOLDER』

4月1日発売

http://www.amazon.co.jp/【Amazon-co-jp限定】STAKEHOLDER-SPECIAL-TRACK-DOWNLOAD-CARD付き/dp/B00UBCSL4O

https://itunes.apple.com/jp/album/stakeholder/id973085359

 

tofubeats


1990年、平成2年生まれ、神戸市在住のトラックメイカー/DJ。インターネットで100曲以上の楽曲を公開し続けるかたわら、 YUKI、FPM、佐々木希、ももいろクローバー、Flo Rida など様々なアーティストのリミックスも手かがけ高い評価を得ている。Web CMなどのクライアントワークも多数。盟友オノマトペ大臣と2011年末にリリースした“水星EP”はアナログ盤として異例のヒットに。強い要望を受けてリリースされたデジタルバージョンはiTunes 総合チャート1位を獲得。iTunes Best of 2012 に選出され、翌2013年のニューアーティストにも選ばれる。2013年春発売の『lost decade』も iTunesで総合チャート1位を獲得。世界のインターネットに散らばる最新のクラブミュージックからJ-POPまで、凝り固まらない平成生まれのバランス感覚を持った新進気鋭の若手トラックメイカー。2013年11月には森高千里をフィーチャリングした“Don’t Stop The Music”でメジャーデビュー。藤井隆を迎えた“ディスコの神様”でも話題に。2014年10月2日にメジャー1st『First Album』、2015年4月1日に『STAKEHOLDER』をリリース。


http://www.tofubeats.com

http://www.tofubeats.com/stakeholder/

 

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http://www.neol.jp/culture/

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