多屋澄礼×DIANA CHIAKI『Female Complex』対談
NeoL / 2015年7月19日 17時49分
多屋澄礼×DIANA CHIAKI『Female Complex』対談
インディミュージックをプレイするDIYなガールスDJチーム、Twee Grrrls Clubのリーダーにして、レーベル兼セレクトショップ、VoiletAndClareのオーナー。さらにはバンド活動やライター、翻訳家、イラストレーターとして多方面で活躍する多屋澄礼。彼女の最新刊『フィメール・コンプレックス(彼女が音楽を選んだ理由)』は、シャルロット・ゲンスブールやズーイー・デシャネル、トレーシー・ソーンといった19人のインディペンデントな女性アーティストの人生を紹介する話題の一冊です。この本に感銘を受けたDIANA CHIAKIもNAME management所属のトップ・モデルとして活躍しながら、ロックバンドのTERROR FAMILIAのヴォーカリストとして、はたまた、DJやトラックメイカーとしても活動。2011年にはカッティングエッジなビート・アルバム『FIRST ALBUM』をリリースしている多彩な才能の持ち主です。そんなふたりが久々の再会を果たした今回の対談では、大好きな音楽とファッションを軸に、自分のスタイルをもって、自由にやりたいことをやる彼女たちのストイックにして、しなやかな日常について語っていただきました。
多屋「CHIAKIちゃんに会うのはホントひさしぶりだよね」
DIANA「2年ぶりくらい?」
多屋「そうなるのかな。TOMOくんっていう共通の友達が主催している"STYLE BAND TOKYO”っていうイベントの楽屋で会ったんですよ。そのイベントに出ていた(ロンドンで活躍する日本人バンド)BO NINGENがみんな車の運転が出来ないからということで、その時、私がツアーの運転手をやってたんですよ」
DIANA「すごいよねー」
――では、以前からお知り合いなんですね。
多屋・DIANA「知ってました(笑)」
DIANA「私がやってるバンド(TERROR FAMILIA)がイベントに出た時、Twee Grrrls Clubのメチルちゃんとも何回かご一緒していたり、スミレちゃんの本も出てすぐ買って読ませてもらいましたよ」
多屋「うれしい。恐縮すぎるー(笑)」
――『フィメール・コンプレックス』を読んでみて、いかがでした?
DIANA「私、今までこういう本を読んだことがなかった」
多屋「ミュージシャンの伝記?」
DIANA「そう。あと、澄礼ちゃんの書く言葉がすごい好きなんですよ」
多屋「私、すごい好きなレコード屋さんがあって、その店主は60すぎのおじさんなんですけど、『なんて男みたいな文章書くんだ』って言われたんですよ(笑)」
DIANA「そうそう、そういうところが好き。すごくいい文章だなと思って」
多屋「私、山崎まどかさんっていう女性ライターさんがすごい好きで、この本を書く時、まどかさんにリスペクトを捧げるような文章を書かなくちゃと思っていたんですよ」
DIANA「スミレちゃんがこの本で書いているアーティストたちの文章を読みながら、そのアーティストの曲を聴くのがすごい楽しくて、すごい勉強にもなった」
多屋「出版記念のトークショーで試しに聞いてみたら、この本で取り上げたアーティストを知ってる人が2人しかいなかったからね」
DIANA「私は元ベル・アンド・セバスチャンのイサベル・キャンベルがすごい好きなので、最初にそのページから読んだよ」
多屋「この本を読んで好きになったアーティストはいる?」
DIANA「エヴリシング・バット・ザ・ガールのトレーシー・ソーンがやってた(前身のグループ)マリン・ガールズとか」
多屋「そういうバンドやって欲しい!」
DIANA「ね。ガールズ・バンドいいなーと思いながら、ギターを弾ける女の子が周りにいなくて」
多屋「今やってるTERROR FAMILIAって、どんなバンドなの?」
DIANA「私以外、全員男ですよ」
――バンド名からして、結構イカついバンドですよね?
DIANA「バンド名に"TERROR"って入ってるから、Facebookに登録出来ないんですよ(笑)」
多屋「まぁ、でも、分かりやすく女の子っぽい音楽をやってる子より、ハードな音楽やってる女の子の方が共感出来るけどね」
DIANA「もともとはベースレスの3ピースのバンドだったんだけど、私はベースの音が好きなので、どうしてもベースを入れたくて、4人編成になったの」
多屋「CHIAKIちゃんはヴォーカルでしょ? だったら、ベースは弾かない方がいいと思う。歌いながら、ベースを弾くと、リズムを取るのがすごい大変だから」
――スミレちゃんはバンドやってるんでしたっけ?
多屋「もともと、BLACK TULIPSっていうガールズ・バンドをやってて、今はTHE STOLEN KISSESっていうバンドで、まさに歌いながらベースを弾いてるんだけど、大変だから、早くギターに転身したいなって」
DIANA「えー、いいなー。私、周りが男ばっかりだから、ガールズバンドにはすごい憧れがある」
多屋「でも、女の子は気まぐれで面倒くさいよ(笑)。チアキちゃんって、もしかすると男の子っぽい音楽が好き?」
DIANA「そう。私、3年くらい前まで、男がヴォーカルの音楽しか全然聴いてなくて。子供の頃はお母さんがハードロック好きだったから、家のなかではずっとそういう音楽ばかりだったし、十代の頃はパンクやP.I.Lみたいなポスト・パンクだったり、一通り古いロックを聴いて。ドイツのインダストリアル・バンドの(アインシュテュルツェンデ・)ノイバウテンがすごい好きだったんだけど、『Hallber Mensch』っていうアルバム・タイトルをバンド名だと思ってた(笑)。ヴォーカルのブリクサがすごいタイプで『世の中にこんなカッコイイ人がいるんだ!』と思ったんだけど、音楽があまりに実験的すぎて理解出来なくて、何がカッコイイのかをがんばって知ろうと繰り返し聴いてた」
――音楽好きの通過儀礼というか。
多屋「こないだ友達とまさに同じ話をしてたんだけど、そのアーティストのことは好きなんだけど、音楽がすぐに理解出来なくて、修業のように繰り返し聴く時期ってあるよね」
DIANA「私にとっては、コートニー・ラヴのバンド、ホールがそうだった。中学生の時、カート・コバーンは好きだったから、その奥さんのコートニーも格好いいに違いないと思って聴いてたんだけど、全然ぐっとこなくて、その良さが分からない私がおかしいのかなって思ってた(笑)」
多屋「ジャケットは可愛いし、部屋に飾ったりするんだけど、音楽的には全然好きじゃないかもしれないっていうアルバムはこの世に沢山あって。そこで拒絶反応を起こして、音楽が好きじゃなくなっちゃったりするんだけど、そこで我慢して聴いていると、道が開けるっていう(笑)。だから、よく若い子にはそうアドバイスしたりするんだけど」
DIANA「ハマれる何かと出会ったら、バーンって突き抜けるんだけどね」
――一般的にレコード屋って、基本的に男の子が多いし、女の子が来ても、彼氏と一緒だったりすることが多いと思うんですよ。でも、お二人は独りでもレコード掘りに行くし、DJもやられているじゃないですか?
多屋「自分の中にはおっさんが住んでいるんですよ」
DIANA「えー、でも、すごい女の子じゃない?」
多屋「外側だけはね。まぁ、男の子といると楽なんだけど、中身は男だから、何かやろうとすると、彼氏的に女の子ばっかり集めちゃうのかもしれない」
――CHIAKIちゃんもDJでは男の子のようにディープな音楽をプレイしてますよね。
DIANA「私、DJするのが全然好きじゃないんですけど、呼んでもらえてうれしいからやってるだけなんですよ。それに私が好きな音楽をいいと思う人がクラブやファッション系のイベントには少ないんですよ。DJは本来その場にいる人が求める音楽に応えなきゃいけないじゃないですか? でも、私はそれに応えるより、自分の好きな音楽を爆音でかけることを優先させるから、さーっと人がいなくなることもよくあって。『あー、帰っちゃった。ごめんなさい』と思いながら、『私は自分がかけてる音楽が絶対いいと思っているから、それでいいよね』って(笑)」
――CHIAKIちゃんはトラックメイカーでもあるわけですけど、作ったり、プレイしているアンダーグラウンドなダンスミュージックは、しかるべき場所ではばっちりハマってると思いますけどね。
DIANA「でも、やっちゃうんですよ。私、自分で作った超へんちくりんなトラックを虎ノ門ヒルズのパーティで、人がいなくなった時を見計らって、ぱーんとかけちゃうんです(笑)。で、『ああ、こういう鳴り方をするのか。じゃあ、ここをもうちょっと作り直そう』とか、そうやってサウンド・チェックしたり」
多屋「私もDJの時、外国人のお客さんから『あれかけて』って言われて、ケンカしたり(笑)。もう次は呼んでもらえないかなって思ったりすることもたまにあるなー」
DIANA「でも、全然大丈夫。『プロのDJじゃねーし!』って感じだもん(笑)」
――二人とも全く媚びないところが男前ですよね。
DIANA「でも、ハラハラしますよ。まぁ、最近はなくなりましたけど、人がいなくなったりしたら、さすがにね(笑)」
多屋「落ち込むよねー(笑)」
――かつては男の世界だったDJの現場もお二人をはじめ、女性DJが活躍する機会も増えましたよね。
多屋「それは単純に見た目が可愛いからだと思いますよ」
DIANA「パーティに花を添える……」
――花を添えていたとしても、かける音楽が最悪だったら、どうなんでしょうね。
多屋「まぁ、でも、それで音楽も良かったら、最高じゃないですか。それに男の人でつまんない音楽かけてたら、それこそ最悪だから、それよりは最低の音楽をかけてる女の子のほうがマシですよ(笑)」
DIANA「でも、洋服はカッコイイのに、ひどい音楽がかかってる場は少なくないというか。そうなると、かけてる人のセンスが疑われるじゃないですか。私、ミュージシャンで、服がイケてなくても、『音楽バカなんだろうなー』って感じで、そういうのは好きなんですけど、服はお洒落なのに、音楽がイケてないと、センスを疑っちゃうんですよ」
多屋「音楽が伴ってない人が多いよね。例えば、ディオールだったり、ソフィア・コッポラの映画が目立つのも音楽のセンスが良かったりするからじゃない? 海外だったら、ヴィンテージ・ファッションが好きな子は普通にヴィンテージな音楽を聴いいたりするし、やっぱり、ファッションや映画が好きなら、それに合った音楽が好きであって欲しい」
DIANA「すごい分かるー」
多屋「フェスのファッションもファッション誌の提案そのままとか、コーチェラのファッション・スナップそのままとか。音楽もそうだけど、何がいいのか、どうしたらいいか分からなくてそうなっちゃうのも分かるんだけど、応用したり、想像したりするのは大事だなって。今回の本で取り上げた女性アーティストは、もともと自分というものがあって、それをどう音楽に反映させるか、試行錯誤していて、そういう話を書いているんですよ。まぁ、それを真似するということじゃなく、みんなそれぞれの試行錯誤があるんだよっていうことを、この本を読んで知ってもらえたらうれしいんですけどね」
撮影 吉場正和/photo Masakazu Yoshiba
文 小野田 雄/text Yu Onoda
多屋澄礼とDIANA CHIAKIのチェキを3名様にプレゼントします。空メールを送信するとプレゼントに応募できます。(←クリック)ご応募お待ちしております。チェキの指定はできませんのでご了承ください。 後日当選された方にはいただいたメールアドレス宛にNeoL編集部よりご連絡させていただきます。
多屋澄礼
『Female Complex』
発売中
(DU BOOKS)
http://www.amazon.co.jp/フィメール・コンプレックス-彼女が音楽を選んだ理由-多屋澄礼/dp/4907583362
多屋澄礼
インディ・ポップを軸にDIYな精神を掲げたDJグループ、Twee Grrrls Clubのリーダーであり、2009年からスタートしたレーベル&ショップ、VioletAndClaireのオーナーとして、現在は拠点を東京から京都に移し女性作家や海外の雑貨などをセレクトしている。リトルプレスの制作やファッションブランドのイラスト、ライター、翻訳家として雑誌や本などで執筆も手がけ、DJとして伊勢丹ガールズフロアのレギュラー選曲、ラジオ出演など音楽を軸として活動中。ブック型のコンピレーション・アルバム「Grrrls Talk」、著書に『インディ・ポップ・レッスン』、訳書にアレクサ・チャン『It』がある(ともにDU BOOKS)。
http://www.violetandclaire.com
https://instagram.com/sumiretaya/
https://twitter.com/tweegrrrlsclub
DIANA CHIAKI
2002年より現在まで、NYLON JAPAN, GINZA, commons&sense等のファッション誌、広告、コレクション等、数多くのショーや雑誌でモデルとして活動する傍ら、2011年、すべての楽曲で作曲、アレンジをしたアルバム『FIRST ALBUM』をPower Shivel Audioよりリリースし、これまでにNinja TuneのKID KOALAやBOADOMSのHisham、渋谷慶一郎氏と共演した。同時期からDJとしても活動する他、ロックバンド「TERROR FAMILIA」を結成。2013年には小林武史、大沢伸一のユニットBRADBERRY ORCHESTRAにボーカルとして参加しロッキンオン主催のカウントダウンジャパン等に出演。雑誌「commons&sense」では写真とコラムを連載している。
http://www.dianachiaki.com/
https://www.facebook.com/dianachiaki
https://instagram.com/diana__chiaki___/
https://soundcloud.com/diana-chiaki
関連記事のまとめはこちら
http://www.neol.jp/culture/
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
ヤングスキニーかやゆー、承認欲求と下心を語る
Rolling Stone Japan / 2024年12月27日 17時30分
-
秋吉敏子が95歳の今語る『孤軍』の音楽人生、ジャズと日本人としてのアイデンティティ
Rolling Stone Japan / 2024年12月25日 18時30分
-
BREIMENと令和ロマンが語る、垣根を掻き乱す「生き方」
Rolling Stone Japan / 2024年12月22日 12時0分
-
トップシークレットマンしのだが語る、大胆すぎるマッシュアップ、100 gecsからの影響
Rolling Stone Japan / 2024年12月21日 12時0分
-
上白石萌音&池田エライザ、音楽特番MC&生歌唱の二刀流で“なりきり嵐体験”「あそこで悦に入るために」
マイナビニュース / 2024年12月14日 5時0分
ランキング
-
1“メラミンスポンジでこする”のは絶対NG! 洗面台掃除で「やってはいけない」7つのこと
オールアバウト / 2025年1月10日 21時50分
-
2冬にやりがち、だけど太りやすい! 要注意な「NG食習慣」3選【管理栄養士が解説】
オールアバウト / 2025年1月10日 20時45分
-
3「開けた瞬間…ニオイと見た目に衝撃」炊飯器で水に浸した米を腐らせた70代認知症母が洗濯機も使えなくなった
プレジデントオンライン / 2025年1月11日 10時15分
-
4今売れている「電気暖房器具」おすすめ製品&ランキング【2025年1月版】
Fav-Log by ITmedia / 2025年1月11日 8時15分
-
5「余ったおもち」捨てないで!レンジで簡単「極うま和菓子」を作れちゃいます
OTONA SALONE / 2025年1月11日 8時31分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください