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Somewhere Beyond〜世界へ羽ばたくクリエイティヴ〜メイクアップアーティストAyami Nishimura インタビュー

NeoL / 2016年1月16日 5時12分

写真

Somewhere Beyond〜世界へ羽ばたくクリエイティヴ〜メイクアップアーティストAyami Nishimura インタビュー

(C)Ayami.By.Rankin.COVER

 

「DAZED & CONFUSED」を筆頭に「VOGUE」「PURPLE」「ANOTHER MAGAZINE」など錚々たるマガジンのカバーを手がけ、ランキンやエレン・ヴォン・アンワースなどのフォトグラファーに指名される日本人メイクアップアーティスト、それがAyami Nishimuraだ。美容室のバイトからスタートした彼女がどのようにキャリアを築いたのか、そして独創的な作品はいかに生まれるのか。Ayami Nishimuraにロングインタビューを試みた。

 

――Ayamiさんは美容室のチラシ配りのバイトからキャリアをスタートされたそうですね。

Ayami「そうです。高校の時に割がいいからという理由で始めて、特にやりたいこともなかったので卒業後もインターンみたいな感じで通っていたら面白く思えてきて美容師になると決めました。実家が姫路なので大阪の美容学校に行って、学校の紹介で東京のお店に就職して6年ほどで技術者になったんです。技術者になる勉強と同時に、夜は英会話を勉強してという生活を3年ほど続けて、ロンドンのヴィダル・サスーンのスクールに入りました」

――なぜロンドンへ?

Ayami「子どもの頃から映画などで観る西洋の生活に憧れていたんです。私は狭い家に家族がひしめきあうというステレオタイプな日本の家庭で育ったんですが、それがすごく嫌で、向いてないなと思っていて(笑)。あと、兄がビートルズ好きで、その影響で私も7、8歳の時から毎日一緒に聴いてて『絶対にロンドンに行って、こういうカッコいい人たちと出会う』と決めてたんです」

——実際に行ってみていかがでした?

Ayami「英語はさっぱりわからなかった(笑)。それに3ヵ月間のコースを申し込んだものの半年経ってもまだ何も掴めていないという感じしかしなかったので、納得がいくまでいようとビザを延長しました。それで、サスーンの先生が紹介してくれたサロンに合格してロンドンで働くようになったんです。

その頃、新聞の募集覧で見つけた人とルームシェアしてたんですよ。セルフリッジズ(百貨店)のウインドウディスプレイをやっている人で、その友だちの中にフォトグラファーの卵みたいな人がいて、テストシュートを手伝ってと頼まれたんです。いざ行ってみたらその人とモデルしかいなくて、メイクもスタイリングもセルフという状態だったので、以前からメイクにも興味があったし、ヘアとメイク両方やったんですね。そしたらそのフォトグラファーがまた違う人を紹介してくれて、という感じで撮影を続けていたら、1年くらいでメイクのポートフォリオみたいなものが出来たんです。今見たらどうしようもないブックだったけど、その時はそれが素晴らしいと思っていたから、いろんなところに電話をかけまくって見せに行きました。それくらい熱心にやってると、『面白いから雑誌で1ページやってみる?』とか、新人のミュージシャンの撮影とか、そういう依頼が少しずつ入って、繋がっていくようになったんです。

ちょうどそのタイミングで、働いてたサロンが移転のために半年間クローズすることになったので、ヘアはやめてフリーランスのメイクアップアーティストになると伝えて円満退社しました」


EllenVonUnwerth:VogueJapan
 
VogueBrazil:MarianoVivanco


Left (C)EllenVonUnwerth-VogueJapan  /  Right (C)VogueBrazil/MarianoVivanco

 




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(C)SebastianMaderJPVogueJuly15'1

――メイクアップのベースは、美容学校やサスーンで学んでいたんですか?

Ayami「いや、全くなかったです」

――じゃあ本当に独学なんですね。

Ayami「そうですね。最初の頃は雑誌に載っているメイクをなんとか真似をしようとして全く違うことになってしまった、みたいなことの繰り返しでした。そんな感じで5、6年やってたら、一応少しずつ出来るようになってきたんです。でもある日、もしかして自分が全然間違ったメイクをしているんじゃないかとすごく不安になって、誰かがやっているところを見たくなったんです。その頃ロンドンファッションウィークにはアシスタントとしてちょっとずつ入るようになっていたんですが、パリに行ってもっと大きなショーをやっている大御所のメイクを見たいと思いついて、夜行バスに乗ってパリに行って、知人に頼んで1週間泊めてもらいました。そこでエージェンシーに電話してまわったんですが、全然何も起こらなくて駄目なのかなと思ってたら、1箇所だけオランダのエージェンシーで、『エリス・ファースというアーティストがいるんだけど、FENDIのショーが決まったから今アシスタントを集めてる。ポートフォリオを送ってください』と言われたんですね。すぐに送ったけど返事が無かったから何回も電話して。そしたら、エリスが『出来なくてもいいからそういう熱心な子が欲しい』と言ってくれて決まりました。ショーでは緊張して全然力を出せなかったんだけど、エリスはすごく良かったと言ってくれて。そのFENDIをきっかけにエリスは売れっ子になってCHANELなどたくさんのショーを手がけるようになったので、私もそのチームに入ってパリやミラノに毎回行くようになりました。それでアシスタントが面白くなってきて、もっと大きなショーを見たいと思ってステファン・マレーに連絡したら、たまたまタイミング良く新しいチームに変えるためにアシスタントを探しているところで、ポートフォリオを見せたら気に入ってくれたんです。ステファンは、CHANELはエリスと戦ってたけど、LANVINやJean Paul Gaultierなどたくさんショーをやっていて、そこから彼のショーには全部ついていきました。エリスのショーにあまり行けなくなってモメたんだけど、ステファンの方が良かったんです。彼は学校の先生みたいに優しくて、いろんなことを学びましたね。化粧品もたくさん貰ったり、面白かったですよ」

――エリスとステファンの違いをもう少し詳しく聞かせてください。

Ayami「うーん、エリスはアイデアが奇抜で、出来る時は思いきったことをやるんだけど、ステファンはクラシックでしたね。綺麗で丁寧。エリスはすごく速くて、10分くらいでワーッとやっちゃうんです。ステファンはもっと時間をかけて、本当に綺麗に仕上げる。一度私がメイクをやっている時に、ステファンが『もうちょっとこうやってみたら?』って半分だけ直してくれて。そしたら突然モデルの目がバンッと大きくなったからビックリして、すごい、やっぱり違うなって感動しました。そこから3年くらいアシスタントについて。当時はアシスタントのフィーもすごく良かったし、エージェンシーに入りながら10年くらいアシスタントをつとめている人たちもざらだったんですが、私は3、4年やったら小さくてもいいから自分のショーをロンドンでやっていきたいと思っていたので辞めました」


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Left (C)EllenVon Unwerth/ITVogue / Right(C)NUMEROChina/LaurieBartley

 




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(C)martha

――その決断は大きいですね。

Ayami「自分でやりたかったんですよ。私が出来るショーなんて、オフスケジュールの本当に小さいショーだけど、それでも自分でメイクを決めてアシスタントにデモンストレーションをやってというのはすごく充実感があった。いつまでたってもアシスタントじゃなく、自分でやらないとという意識が強かったんです」

――ああ、そうですよね。アシスタントは師匠のメイクをやるわけで、自分のものではない。

Ayami「そう。アシスタント時代に、イヴ・サンローランの一番最後のクチュールのショーもやったんです。最後にサンローランがキャットウォークを歩いて、そこでカトリーヌ・ドヌーヴが娘と一緒に歌って。もう大感動して、みんなで泣いて。あれは今思い出しても涙が出ます。絶対にずっとやっていこうって思ったんですよね、あの時に」

――でもそれはアシスタントとしてではなく、自分の力でまたここに来よう、という気持ちだった。

Ayami「はい、将来は自分もこれくらいのショーをヘッドで出来るくらいのアーティストになりたいと思いました」

――アシスタントを辞めてからはどのような仕事を?

Ayami「ショーをやったり、カタログやいろんな撮影も入ってくるようになって。その頃、仕事でミラノに頻繁に行くようになっていたんですが、ミラノのスタイリストやヘアドレッサーなどいろんな若手がいるグループと友達になったんです。GIVENCHYのデザイナーになったリカルド・ティッシともその頃に知り合って、よく家に泊めてもらったりしてました(笑)。そのグループの紹介でクロースアップというエージェンシーにも入って。ICEBERGやMARNIのショーもやりました。リッキー(リカルド・ティッシ)とは今でもたまにバッタリ会うから、『元気ー?』って挨拶しあって。面白かったですね、いろんなことが。

そこからまた大きな出会いがあって。パリに行っていた時には必ず行く、マレにの小さなヴィンテージの本屋があるんです。高いんだけどとてもいいコレクションを置いていて、パリに行ったら毎回そこに通っていたんですが、そこでたまたま写真家のマリアーノ・ヴィヴァンコと知り合って意気投合して。彼もロンドンだったから、戻ってからはマリアーノと一緒に撮影するようになったんです。それが10年くらい前なのかな。マリアーノはニコラ(・フォルミケッティ)と仲が良かったのでニコラとも一緒にやるようになって、ちょうどニコラが『DAZED&CONFUSED』をやり始めたところだったから、一緒に毎月カバーもやったし、いくつもファッション誌のカバーをやり始めて、その辺りで風向きが良くなったと思います。今は『VOGUE』などで美しい写真を撮っているけど、その頃はマリアーノもコンセプチュアルなストーリーをやってたから、メイクもカラフルだったり思いっきりやってました。その頃マリアーノがドミニコ・ドルチェと仲が良かったので、ドルチェ&ガッバーナのメンズとレディースのルックブックをやったり。少しずつそういう仕事も入ってくるようになったし、お金がもらえるようになってきて。マリアーノに出会ってから突然忙しくなって、メイクも面白い要求に応えようとしていろんなことを考えるようになりましたね」

――メイクに関して、マリアーノの意見に従うことが多かったんですか。それとも彼はアイデアを投げて欲しいという感じなんですか?

Ayami「マリアーノはアイデアがたくさんあるから、自分がディレクターとして立ってリーダーシップをとっていくタイプ。彼はメイクも好きだからストーリーに合うメイクを考えてくるんだけど、例えばこういうことも出来るよというアイデアはすごく喜ばれます。でも実際にモデルとメイクルームに入ったらまたアイデアがどんどん出てきて、全然違うことになったけどもっと良くなる、そういうことが多かったですね。楽しかったです。すごくエネルギーが高くて、仕事が早い」

――『DAZED』をやり始めたのが2005年くらいですよね。それまでミラノでの仕事が多かったのが、ロンドンベースになって。

Ayami「そう。その辺からだんだんミラノにも行かなくなって。エージェンシーも辞めて、まだひとりでずっとやってたんだけど、NYのJedrootがロンドンにオフィスをオープンすることになったので所属しました。ロンドンで初めてのエージェンシーで、3年くらい入ってましたね。その時は、Jedrootがすごく話題になって、私がロンドンで一番最初に入ったから、みんな私とやりたくてすごくオプションが入ったんですよね。そこでまたステップアップしたって感じかな」


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DanielSannwald:Antidote


Left (C)DavidDunan/ITVogie / Right(C)DanielSannwald/Antidote

 




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(C)Takay/MarieClaire/Beauty/Oct15'1

――Ayamiさんのお仕事は幅広いですが、日本ではランキンが撮影した『Ayami Nishimura』でのサイバーなメイクが話題でしたよね。

Ayami「それも『DAZED』からの流れですね。『DAZED』で4ページもらえたからマリアーナと一緒にビューティのヴィジュアルを作ったんです。ペインティングみたいなメイクをやったんですが、ランキンがオフィスで見本を見て、『このメイク面白いね。メイクをやった子を呼んで』って。それが初めての出会い。彼もビューティをやろうと思ってるということで、一緒にやろうということになったんです。私は仕事じゃなくても、空いてる日があったらテストシュートみたいな感じでほとんど毎日ビューティの撮影をしていたんです。それを2年ほど一緒にやりながら本を出しました」

――あのブックは、Ayamiさんが主導でアイデアを出したんですか?

Ayami「仕事によりけりですが、ブックは100パーセント私です。ランキンは自分もアイデアを出してやろうと思ってたんでしょうけど、私は毎回絶対に『明日はこういうことをやりたい』というものを送ってたんです。頭の中でアイデアがラインナップしてたから、それ全部ダウンロードして空にしようと思ってて。今までやりたかったんだけどやれなかったり、機会があったら実現したいものが溜まってたから、聞かれた時に50メイクくらいアイデアがあってそれを全部やろうと思って。アイデアにはまったく困らなかったですね。最初の頃はやってみたら全く違うことになってボツにしたものもあります。でも向こうも忙しいし、私も忙しかったし、実際に撮れた時にボツにしてたら進まないから、これじゃ駄目だと思って、アシスタントに家に来てもらってテストして、プロセスも全部書いて、プロダクトも決めて。半日撮影字間をもらえたら、3つも4つも撮るようにしてストックしていきました。撮影に2年かかってるけど、まとめて撮ってるから実際は15日くらいかな」

――あの本ではボディメイクも印象的でした。

Ayami「アイデアは沢山あるんですけど、ボディメイクは難しいからやりだしてからいつも後悔するんですよね(笑)。完成すると達成感がすごいんですが、時間がかかるし、顔はほぼ平面だけどボディは立体的だからやっていくうちに立体に合わせるのがすごく難しくなってくる。しかもフォトグラファーがモデルを動かすと、絶対に空いてるところが出てきて、その場でメイクすることになったりして。やってることはテキスタイルデザインに近いなって思います。そういうのでアイデアが出ることが多い。本の一番最後に唇のヴィジュアルがあるんですけど、それはパリで何年か前にYSLのエキシヴィジョンがあって、そこに唇の柄のワンピースがあったんですね。こういうのをメイクで裸のボディにやったら面白いんじゃないかなと思って。あのヴィジュアルは家で唇のシールみたいなものを沢山作って貼ってるんです(笑)」

――なるほど。Ayamiさんはどんなところからインスピレーション受けてるんですか?

Ayami「色の綺麗なものが好きだから、日本だったら歌舞伎や着物。春画も好きです。日本にしかないし、ああいうエロチックなものは好きです。あとは和菓子とも綺麗。なんでも、どこからでもアイデアは浮かびます。いいなと思ったらとりあえず写真を撮って集めてます。最初の頃は、セントマーチンの図書館に毎日のように行ってました。あそこには『VOGUE』なんかが一番最初の方から全部あるんですよね。全部見ましたよ。フォトコピーをひたすら取って。それは今も家に綺麗に入れてます。そのフォトコピー集が20冊くらいあるんです。他にも写真集やペインティングもたくさんあって、ピカソもフランシス・ベーコンも色々見て。あと、動物の写真。動物の柄にも影響を受けていて、そういうものも集めてました。鳥もそう。綺麗だし、よく見るとメイクに使えるアイデアがいっぱいあるんですよね。お花もすぐトランスフォーム出来るじゃないですか。なんでも、いろんなところからアイデアを得てました。フォトコピー取ったり、記録に残して、必要な時はいつも見てます。本もしょっちゅう買うから、引越しの時大変なにんです(笑)」

――じゃあその当時のフォトコピーも全部持ってるんですね。

Ayami「全部あります」

――わあ、いい話ですね。では、現場で求められるものプラス、そのストックなどから得たアイデアで毎回勝負している。

Ayami「そうですね。朝、洋服を見ながら話し合ってメイクを決めるじゃないですか。そこで言われたことだけじゃなくて、何かこっちからも提案して、ちょっとでも自分らしいことが出来ればと思ってます。もちろん押しつけはしませんけど。そういう時は、なんとなく一番最初に浮かんできたイメージをやるのがいい気がします。勘というか。自分が今までやってきたことと、そういうリサーチを常にずっとやっているところから来てるインスピレーションだから」




AmericanBazaar:BenHassett


 

(C)AmericanBazaar/BenHassett

――Ayamiさんにとってメイクアップの一番の魅力は?

Ayami「私はやっぱりモデルにメイクをする、ファッションの撮影でメイクをすることですね」

――表現。

Ayami「そう、ファッションの一部としてメイクをやってる感覚。アートベースのメイクとか、自分のやりたいことをやる。それは一般の方を綺麗にするということではないですね。だからメイクアップ自体に興味があるのではないのかもしれない。

モデルってやっぱりフォトジェニックなんですよ。スタジオで会ったら『ええっ、この子?』っていう人が、写真ではすごくよかったりする。今風の顔というか、一般の方が見たら綺麗じゃないのかもしれないけど、ファッションの中ではその顔が流行ってるというのもある。だから一般の人に私がモデルにやってるようなメイクをしても似合わないかもしれないし、それを似合わせようとするとまた別の努力をしないといけないのかもしれないけど、モデルの顔は白紙なのでそういうことを省略して自分のアイデアを表現できるんです。私はやっぱりモデル、セレブリティもやってますけど、アーティストとかそれ以外は興味ないです。クリエイティヴな、ファッションとしてのメイクに興味があるんっだと思います」

――ちなみに、クリエイターにはある瞬間に自分の頭の中で思ってることを表現出来るようになる瞬間が来ると思うんですが、Ayamiさんにもそういう瞬間ってありましたか。

Ayami「パリコレに参加してアシスタントになったのは、そういう理由からなんですよね。技術的に未熟で思ったことが出来ないというのを解消したかった。こなしていくうちに出来るようになってきたけど、プラス自信もあると思います。私生活が上手くいってて自分に自信がある時はエネルギーがあるから人も巻き込めるし、人がいればやりやすいからメイクも上手に出来る。気になることがあるとクリエーションにはすごく響きますよね。ちょっとやそっとのことで影響されないように自分自身がもっと強くならないといけない。そういう意味でエージェンシーに入ってサポートしてもらうのは大事なことだと思うし、自分が本当に集中出来る環境を自分で作っていかないと。私が技術的な意味でいろんなことが出来るようになったと思えたのは、ランキンとの本が大きいです。200パーセント満足する形で終わらせることが出来たことが自信になった。やりたいことが本当に出来た、という」

――ロンドンでのご活躍を経て2年前にNYに移られましたが、それはどうして?

Ayami「NYは将来行ってみたいと思ってたんです。7年前にマリアーノがNYに引越して、私も仕事で行くようになって。ビザも取ったし、仕事で行って帰ってくるぶんにはなんておもしろくて素敵なところなんだろうと。それで行きたいという気持ちが高まって5年くらい悩んだ末に引越しを決めました。でもマリアーノは残念ながら、ロンドンの方がいいって帰っちゃったんですけどね!(笑)」

――NYに移って広がったことはありますか?

Ayami「仕事はやりやすいです。ウェルカムな雰囲気があってすぐに入れるし、倍くらい忙しくなりました。ロンドンも行ってるけど、アメリカ内も、ソチ方面やモロッコも行ってて。カリブ海に行くことも多くなった。パナマやドミニカンなど、今まであまり出てこなかった国に行くことが増えました。それも面白いですよ。ロンドンは20年も住んだから、ちょっと変えたいなというのもあったし。国を変えるのはすごくエネルギーがいるんですけど、アーティストのためにはいいんじゃないですか? またいろんなことを学ぶというか、知らなかったことを覚えていって。5、6年は絶対住んで、それから合う合わないも決められばいいと思う」

――昨年は京都造形大で講師も務められましたね。

Ayami「1年だけの客員教授で、実際に行ったのは一度ですが。その後は人間を使っての写真撮影で、そのテーマと出来あがったものをSkypeで話しながら私に送るというプロジェクトでした。学校を訪れた際は1時間半のトークで、その後デモンストレーションをやることになっていたんですが、準備に時間が足りないんじゃないかと思って、前日から行って校舎の中を見せてもらって。コスチューム科というところなんですが、面白い作品がいっぱい見つかったので、ぜひそれをメイクに合わせて選びたいというアイデアが出てきたので、デモンストレーションでは実際そうして4パターンを披露しました。本番はオープンセミナーみたいな感じで外部の人も含め130人の前で、1時間半ピッタリ話しました。自分にしては上出来だったんじゃないかな。その後にはバンクーバーのファッション学校でも講義を行いました」

――教えるということは京都造形大が初の試みだったんですよね。

Ayami「はい。今までは自分のショーの時にアシスタントの前でデモンストレーションをやるくらいですが、そういうのは大好きで。私はアシスタントの教育にはすごく興味があるし、サポートしてあげたいというのはあるんですけど、それの延長で、若い学生とかに会ってみたいなと。そしてもし私が言ったことでその若手の人たちが実際やるようになって、もっと後から、そういえばあの時こんなことを言っていたなって思い出してもらえたら面白いんじゃないかなって。本当は人前で話すのは苦手なんだけど、自分から苦手なことをやってみたい、シャイな自分を克服したいところもあって。怖いけど、もしもちょっと何かが変わるんだったら自分のためにもなるから。自分のインセキュアリティと戦ってるっていうか、自信の無さをブチ壊して、もう少しずついろんなことをやって強くなっていきたいんです。そして最終的に理想の自分になれたらと思います」

ーー自信がないからゆえに強くなろうと。

Ayami「そうかもしれません。でもなりたい自分になるには、やるしかない。失敗しながらもやっていくしかないと思います」

 

企画・取材・文 桑原亮子/edit & interview Ryoko Kuwahara


AyamibyRankin


Ayami Nishimura

日本出身。1993年に渡英。1998年よりメイクアップアーティストとしてのキャリアをスタート。雑誌「Dazed & Confused」はじめ、「Vogue」「Another Magazine」「Purple」など錚々たるメディアで活躍。写真家ランキンとコラボレーションした『Ayami Nishimura by Rankin』を2012年に出版。数多くのファッションショーのメイクも手がけている。


http://www.ayaminishimura.com

 

Born and raised in Japan, Ayami moved to London in 1993. Self-taught, Ayami developed her own style which is edgy and graphic whilst honouring classic beauty. In 1998 she began her career as makeup artist, since then she has been working on high profile editorial and commercial projects, predominately within the fashion & beauty industry.  Her first break came when she started to publish her works on Dazed & Confused magazine. Since then she has been constantly working on leading titles such as Italian, Japanese, Chinese, Russian Vogue, Teen Vogue, American & UK Bazaar, Self Service, Another Magazine, LOVE magazine, Purple, i-D, NUMERO, V and 10 Magazine.


In 2007 she met Rankin - photographer and also publisher of Dazed & Confused, Another Magazine and Hunger. The two started to collaborate on numerous beauty shoots and pushed the boundaries and possibilities of makeup.  Their first collaborative book on beauty, “Ayami Nishimura by Rankin” was published in July 2012 in London and LA, August in Tokyo Diesel Gallery. This fabulous beauty book has been a remarkable success, it is now considered the bible for young makeup artists.


Ayami has also worked on many fashion shows include Emilio De La Morena, Nasir Mazhar, Peter Pilotto, Christopher Raeburn and Pam Hogg for London Fashion Week, Paris Haute Couture for Dutch avant garde designer Iris Van Harpen, Aganovich in Paris Ready to Wear, Men's Fashion Week in Milan and Paris including Missoni, Acne, Marni, Qasimi and Iceberg.


Ayami has been working with many other photographers including, Ellen Von Unwerth, Venetia Scott, Albert Watson, Solve Sundsbo, Laurie Bartley, Sean & Seng, Jason Kibbler, Mariano Vivanco, Miles Aldridge, Tom Munro and Matt Irwin.


Ayami now divides her time between New York and Europe.

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http://www.neol.jp/beauty/

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