その幸せは本物か? 1930年代から今に問いかける名作ディストピア小説
NeoL / 2019年9月24日 19時42分
オルダス・ハクスリーが1932年に発表した小説『すばらしい新世界』は、見栄えのいい繁栄の裏側で人が持つべき理性や尊厳を失っている世界を描いたディストピア小説の傑作であり、ジョージ・オーウェルの『1984年』と並び称されることも多い。
本書の舞台は、破滅的な戦争の教訓ゆえ「安定」を絶対とする管理社会が築かれた26世紀のロンドン。
その世界には工場から生産され、生まれながらにして遺伝子の優劣によって身分を分けられた家族を持たない人々が暮らしていた。そんな環境でも、睡眠時教育で消費を美徳とした「生きる意味」を与えられ、発達した科学で死ぬまで健康な体を手に入れた人々に不満はない。むしろ、大多数の人間は奨励されるフリーセックスで寂しさと欲求を満たし、手軽に幸福感を得られる政府支給薬「ソーマ」を片手に、精神的に充足した人生を歩む。世界統制官と呼ばれる10人の統治者によって管理された、嫉妬も憎悪もない、まさに「すばらしい新世界」だ。しかし、そんな中でも世界のあり方に疑問を持つ人々は存在した。彼らは自分に、世界に、問いかける。この世界は本当に正しいのか、とーー。
1930年代、資本主義の発達に伴い、効率が第一優先として考えられるようになった世界へのアンチテーゼとして書かれた本書だけあって、さらに進化した資本主義の時代を生きる私たちにも通じるものが多い。
ひたすら消費を煽り、湯水のごとく供給される商品とインターネットから無限に湧き出る娯楽に熱中し、しかしその一方で家族の繋がりや人間関係は希薄化していく……もしかしたら、私たちも「すばらしい新世界」に片足を踏み入れているのかもしれない、そんなことを考えさせられる作品だ。
『すばらしい新世界』
オルダス・ハクスリー
早川書房 864円、ほか
Amazon
関連記事のまとめはこちら
https://www.neol.jp/culture/
この記事に関連するニュース
-
これができないと孤立する…ハーバード大の研究で判明「人間関係が豊かな人と貧しい人」を分ける2つの要素
プレジデントオンライン / 2024年4月29日 15時15分
-
ある男の不審死を追う刑事が辿り着いた、おぞましい光景とは――50年前の衝撃作『ソイレント・グリーン』本予告解禁
クランクイン! / 2024年4月23日 17時0分
-
映えない「ディストピア飯」地味に人気の続くワケ 人々が食いつく背景には何があるのか
東洋経済オンライン / 2024年4月20日 9時40分
-
映えない「ディストピア飯」地味に人気の続くワケ 人々が食いつく背景には何があるのか
東洋経済オンライン / 2024年4月19日 11時40分
-
NHK「英語でしゃべらナイト」は異×異の教養論 激変の時代に生きる 頭の強さとハザマの思考
東洋経済オンライン / 2024年4月19日 11時0分
ランキング
-
1有毒植物の“誤食”に要注意 死亡例も 農水省が注意喚起
オトナンサー / 2024年5月18日 20時10分
-
2煮物だけじゃない!スーパーフード並みの栄養価「切り干し大根」の意外な食べ方
週刊女性PRIME / 2024年5月18日 8時0分
-
3ヤマトHDを苦しめる「2024年問題」…大幅減益で株価も大幅下落(小林佳樹)
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年5月18日 9時26分
-
4ワークマンの「機能的なサンダル」3選 2000円前後で買える、アウトドアでも活躍する優秀アイテム
Fav-Log by ITmedia / 2024年5月18日 9時55分
-
5「16時間断食のデメリット」無理なく克服する方法 脂肪のほかに「燃やされてしまうもの」を補う
東洋経済オンライン / 2024年5月18日 15時0分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください