「シリア危機」における「米ロ合意」、今後はどう展開していくのか? - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
ニューズウィーク日本版 / 2013年9月17日 12時47分
13日の金曜日の時点では、ジュネーブでの対ロシア交渉に参加していたジョン・ケリー国務長官は「ロシアとの第一回交渉は順調だった」が、一旦これで区切りとするような声明を出していました。ですが、翌日の14日の土曜日には、ケリー長官はまだジュネーブにいたのです。それどころか、ロシアのラブロフ外相と共同記者会見を行って「合意が成立した」と述べ、TVでは握手のシーンまで流れたのです。
サプライズの演出としては見事でしたが、事態が余りにも急展開したことで評価はバラバラです。とりあえず、この合意に至る過程を簡単に再確認しておくと、
(1)8月29日の英国議会の「攻撃案否決」とキャメロン首相の「この決議に従う」という発言を受けて、オバマも「対シリア軍事行動に関しては議会の意向を聞く」と言ったものの、9月7日(土)から8日(日)にかけては、議会での議決はほぼ絶望的な状況に。
(2)それでも予定されていた10日(火)には、オバマは全米に向けてTVで演説。内容は「ロシアと交渉中。ここまでは軍事力行使を示唆しての圧力が奏功している。事態が流動的なので議会審議は待って貰いたい」という「中途半端」なもの。尚、演説の中で「米国はもう世界の警察官ではない」という発言も。
(3)これに対して(?)、11日のニューヨーク・タイムスには、プーチンが寄稿して「アメリカが自由と民主主義の守護者として特別な国として振る舞うのは不遜」であるとしてアメリカを非難。また「国連創設の精神に戻って安保理は『コンセンサスによる平和』を実現すべき」と主張。
(4)12日よりジュネーブにて、米ロ外相協議。14日には「シリアの化学兵器禁止条約加盟、シリア国内の化学兵器は国際管理に移行」という方針で合意。
という流れで来ています。この合意ですが、とりあえず、オバマに近い民主党支持者からは「歓迎」のニュアンスで受け止められているようです。例えば、次期大統領選における民主党の(現時点での)最有力候補である、ヒラリー・クリントンはこの「米ロ合意」を支持するとしています。
基本的に、アメリカの民主党は共和党よりもずっと「国連」には親近感を持っています。例えば、ブッシュ父による湾岸戦争以来、紛争解決に関するアメリカの軍事行動に関しては「多国籍軍や有志連合」の枠組みとなっていたわけです。国連ではなくアメリカが「世界の警察官」という役割を担ってきた、この「国連軽視主義」に対しては、民主党はホンネの部分では懐疑的でした。
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