「シリア危機」における「米ロ合意」、今後はどう展開していくのか? - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
ニューズウィーク日本版 / 2013年9月17日 12時47分
今回、「敵対していた」プーチンの提言に乗った形というのは、確かに格好が悪いものの「国連の枠組みでシリア問題がコンセンサスで処理」できれば「それに越したことはない」、民主党的なカルチャーからするとそうした反応になるようです。
民主党でも左派になると、一時は緊迫していた「軍事的介入」には「反戦」の立場から反対していたわけです。「オバマは支持したいが、新しい戦争はイヤだ」というわけですが、このグループも、今回の「外交的解決の可能性」は歓迎しています。
一方で、共和党のベテラン、特にこの間「軍事タカ派」的に振舞っているマケイン、グラハム(いずれも上院)といった議員たちは「軟弱外交」だとして激怒しています。「ロシアを信用することはできない」あるいは「そもそもシリアが約束を履行する保証がない」ということでカンカンです。
では、例えばマケイン、グラハムの代案はというと「空爆だけで脅すのがそもそもアメリカとして弱みを見せている」のであり、「反政府勢力の中の信用できるグループに武器供与を行って地上戦闘も支援」することで「アサド政権の転覆を目指す」というものです。またロシアとの外交による解決には極めて懐疑的です。
一方で、シリアへの介入そのものに強く反対していた共和党若手のランド・ポール上院議員は「外交的解決に向かうのは結構なことだが、オバマの言うように空爆をチラつかせて脅したから外交が進んだのではなく、我々が終始軍事行動に反対したことが今回の外交的前進につながった」と述べています。マケイン、グラハムのような「長老」とはあくまで一線を画した見方と言えます。
そんなわけで、現時点でのアメリカの国内世論は、この「オバマ=プーチン合意」に対しては様々な見方に割れています。ですが、色々な意見が飛び交っている中で、興味深いのは何はともあれ「結果オーライ」だという考え方です。
ワシントン・ポストのベテラン記者である、ボブ・ウッドワードは15日(日)のNBCの政治討論番組『ミート・ザ・プレス』に出演して「要は結果ですよ」と述べていました。「相当に偶然性が作用したようだが、結果的にこの危機は沈静化しつつあるわけで、その結果は評価できる」というのです。世論の平均値はもしかしたら、そんなところにあるのかもしれません。
ちなみに、今後のこの問題ですが、まだ何も解決したわけではありません。問題の解決にはいくつものハードルがあります。中でも、「50カ所に分散しているという化学兵器をどう移送もしくは処分するのか?」「化学兵器を製造保有したということを事実上告白した形のアサド政権は崩壊するのか? その受け皿は?」という2つの点については「不透明」以外の何物でもありません。
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