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イデオロギーとグレーゾーン - ふるまい よしこ 中国 風見鶏便り

ニューズウィーク日本版 / 2013年9月21日 15時33分

 特に周永康は胡錦濤時代には王よりも党内地位は高かった。また党指導部である中央政治局の常務委員経験者に及んだ捜査としては文化大革命以来40年ぶりという「大物ターゲット」だ。同時に周に連なるとされる石油業界関連の国有企業トップが次々と職を解かれ、取り調べを受けていることが明らかになっており、国の最重要業界と言われるエネルギー分野で胡・温時代よりもずっと踏み込んだ汚職摘発が行われていることを伺わせる。一方で周は薄煕来とも近かった人物とされ、これらの動きは政争の一貫とも見られているが、全国の公安システムのトップに君臨していた周の処遇に喝采を叫ぶ人が多い。

 そしてこれら一連の党内汚職の摘発を王岐山という人物がイデオロギーを叫ぶでもなく、手柄を派手に喧伝するでもなく、黙々とその職務を果たしているふうなのが印象的でもあり、対照的である。

 今週木曜日の19日に発売された週刊紙『南方週末』でも、そんな王岐山のやり手ぶりを取り上げている。それによると、党内の腐敗をチェックする中央紀律検査委員会は王岐山の下、ネットユーザーが微博で告発する地方官吏の情報を集めるグループを設立、実際にそうして集めた情報を元にエネルギー局長が失脚したし、つい最近も超大物の国有資産監督管理委員会の主任が取り調べを受けていることが明らかになっている。

 また、地方政府を含む公務員たち(国有企業関係者含む)に対して公費利用を厳しく制限し、そのお陰で高額商品の売り上げも明らかに激減し、日本のお中元やお歳暮シーズンに近い、中秋節(9月19日)前の贈答品シーズンも過去に比べて売り上げは惨憺たるものだったようだ。

 それにしても、この『南方週末』の記事はえらくこの王岐山個人を持ち上げている気がする。確かに就任後、公務員に対して「所有するすべての会員制カードを廃棄、あるいは上司に差し出す」などの具体的な施策を進めていることがあげられており、メディアにその成果を披瀝するでもなく黙々と汚職官吏を摘発する姿は、今の(あるいはこれまでの)中国汚職対策上では珍しく一歩踏み込んだものだ。

 だが、この記事はこの王岐山に対する評価を、微博で元エネルギー局長を実名告発して注目された、経済誌『財経』の羅昌平副編集長やかつて王らと意見交換の場に招待されたという大学教授らの言葉で綴っている。いかに王が微博の情報に注目しているか、そして汚職取り締まりに向けて紀律検査委員会内部の新しい人材、そして担当配置が行われてきたか......。これは明らかに王岐山が進めている活動に関する記事なのだが、王岐山に直接取材した言葉は一切含まれていない。

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