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イデオロギーとグレーゾーン - ふるまい よしこ 中国 風見鶏便り

ニューズウィーク日本版 / 2013年9月21日 15時33分

 不思議に思いながら、読みつづけて気がついた。ああ、これは王岐山の汚職取り締まり活動を評価する一方で、その支えになってきた微博、特に実名告発や社会の監督の場としての機能を再評価し、さらに微博を今震え上がらせている強権的な政府当局に対する「抗議」の表明ではないか。

 これらすべての動きは習近平のトップ就任で始まった。官吏に対する取り締まりと庶民に対する取り締まりは、両者を震え上がらせ、官も民も習政権に従わせようとしているように見える。そしてすでにそれは間違いなく効果を表し始めている。

 だが、このような恐怖感による治政に、民間の人々は大きな抵抗を感じている。このような恐怖感によって押さえつけられた社会がこのまま続いてよいわけがないと感じている。また政府が西洋諸国やその文化を敵視するようなイデオロギーを振り回すことに不安も持っている。西洋的価値観を取り入れれば、必ず災いを招くとまで言い切る文章すら出現しているのだ。

 だが、一方でかつて鄧小平らが西洋的価値観を取り入れて推進した経済発展。そこには共産党のイデオロギーとは相容れないように言われた「グレーゾーン」も多い。そしてそこでは確かに汚職も蔓延した。そこに経済担当出身の王岐山が斬り込み、大なたを振るう。だが、その彼は一切イデオロギーを口にしない。さらには、汚職官吏を告発する庶民の声に耳を傾けている――。

 恐怖心で人々をコントロールしようとする習近平新政権に対し、王岐山へのメディアや民間の評価は彼らの希望と期待を代弁しているのだろう。彼がいる限り鄧小平が引き込んだ西洋的価値観の「グレーゾーン」は継続できる。そしてそんな「グレーゾーン」自体が、実は今の庶民たちが生き残れる空間であることを、人々は知っているのだ。




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