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「国際成人力調査」日本トップは喜べるのか? - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代

ニューズウィーク日本版 / 2013年10月15日 10時58分

 経済協力開発機構(OECD)が、24の国と地域で16~65歳を対象に国際成人力調査(PIAAC)という調査を行いました。この調査は今回が第1回なのだそうですが、日本は「読解力」と「数的思考力」の平均点で1位となったとして、各新聞の社説などでは「日本の教育水準の高さが証明された」という種類の評価がされているようです。

 この結果は各国でも報道されており、アメリカでは、例えばAP通信が配信した記事では「アメリカの成人の基礎学力が相当に低い」ということ、日本はその点で大変に優れていることなどを取り上げて、「自分たちは何とかしなくてはいけない」というニュアンスで伝えられています。

 ですが、私はこの発表を見て喜んでばかりはいられないものを感じました。2点申し上げておきたいと思います。

 1点目は調査の評価の問題です。この調査ですが、4種類の領域で構成されています。(1)読解力、(2)数的思考力、(3)ITの活用による問題解決能力、(4)背景調査、の4つです。このうち、日本が優秀なのは(1)と(2)です。ちなみに、この(1)と(2)については基本はパソコンで回答するのですが、パソコンが使えない場合は紙でも回答できるようになっています。

 また(3)に関してはパソコンを使用して回答することになっていますが、日本の成績は全年齢にわたって低いだけでなく、全体のテストをパソコンで受験が可能かを判定する事前テスト(ICTコア)の不合格率は24カ国中最高だったということです。また日本の場合、抽出された1万1000人の対象者のうち、実際に回答している人は5200人だと発表されています。

 ということは、抽出された日本人の50%以上は参加を拒否しているわけです。また、参加した人の中でもパソコンの活用能力が低いということを考えると、拒否した人は同じように低いか、あるいはもっと不得意であって、調査の概要を知った時点で「自分は苦手だ」とか「悪い結果が出たら恥ずかしい」という感情から調査を拒否した人が相当数存在すると推測されます。

 つまり「パソコンの能力テストで不合格なら紙でも受けられますよ」というオファーをされたとして、「だったら安心だから受けよう」という人よりも「不合格になって恥ずかしいから拒否」という人の方が相当にいるのではという推察が可能です。(4)の背景調査で学歴などを聞かれることを嫌がって調査を拒否した人も相当数いるでしょう。

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