支持基盤揺らぐオバマ政権、日本での評価には疑問 - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
ニューズウィーク日本版 / 2013年10月31日 14時20分
今週に入って、オバマ大統領の支持率が急落しています。有名な政治サイト「リアル・クリアー・ポリティクス(RCP)」が、多くの世論調査の平均値として公表している指数も、「支持が44・1%に対して不支持が51・7%」と再選後としては最悪の数字となりました。
10月17日の「政府閉鎖+債務上限危機」を乗り切った際には、危機を招いた元凶は議会共和党にあるというイメージが広がり大統領の支持は戻ったのですが、今週の状況はかなり深刻であると思います。
そこで気になるのが、日本での報道や論評です。9月以来の「政府閉鎖」トラブルの中、日本での「オバマ評」はかなり辛口になっていました。シリア問題でのオバマの態度についても、日本では評判が悪かったようですが、特に9月から10月の危機に関しては、一連のゴタゴタの責任はオバマにあるという種類の論評が目につきました。
私はこの間の日本での評価については、ずっと違和感を覚えていました。シリアへの対応にしても、かなり「危険なゲーム」であったのは事実ですが、最終的にロシアとの妥協が成立する中で、国連の化学兵器禁止機関が本格的に動き出したという結果は国際的には受け入れられています。ですが、日本では「オバマは攻撃すると見せて腰が引けた」ということで随分と評判が悪いのです。
一方で、「政府閉鎖+債務上限危機」に対する日本での評価も奇妙でした。特に「オバマケア(医療保険改革)」にこだわった「大きな政府論」はダメだとか、その点で「妥協しない姿勢が危機を招いた」という論評が目立ちました。日本の親米勢力は、北米市場での景気回復に期待する中でオバマの医療保険は「景気の足を引っ張っている」から批判しているようにも見えますが、アメリカの財界はとっくの昔に「オバマケア」については支持もしくは、発足を前提として動いているのです。
そう考えると、この間の日本でのオバマ批判の論調というのは何とも説明のしようがないわけです。もしかすると、今でも日本の親米派とか政財界の保守派の中には、アメリカの「リベラル」よりも「保守」の方が、民主党よりは共和党の方が親日だという思い込みが残っているのかもしれません。そう考えると、アメリカの政治が混乱するのは「リベラルな民主党のオバマの責任」だと期待感込みで直感的に感じてしまう、そんな可能性もあるように思います。「悪いオバマ」が沈めば、「より親日の保守」が浮上するだろう、そんな期待と思い込みです。
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