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支持基盤揺らぐオバマ政権、日本での評価には疑問 - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代

ニューズウィーク日本版 / 2013年10月31日 14時20分

 私は、これは危険な誤解だと思います。というのは、今週に入って確かにオバマの支持率は急落しているのですが、その批判は「右から」のものではなく、「左から」のものだからです。

 今週の支持率急落の原因は大きく2つあります。一つ目は、問題の「オバマケア」つまりオバマが導入した「政府補助によって負担が軽減された国民皆保険」の運用トラブルです。10月1日にウェブサイトを華々しくオープンしたのはいいのですが、サイトが何度もダウンしており、加入手続きが思うようにできないというトラブルが深刻化しています。

 報道された内容から推察すると、今回の新しい保険に申し込むには、申込者の属性によって「高齢者向け」「軍人軍属向け」「公務員向け」「身障者向け」などそれぞれに加入条件が異なり、しかも州ごとに保険制度が異なっています。つまり、一つのポータルサイトから入っていっても、加入手続きのプロセスによって一人一人、処理内容も見に行くデータベースも、最終的に加入する保険も全く違うわけです。

 問題は部分ごとに異なる企業に設計を依頼し、バラバラのシステムを繋ぎあわせた全体像に関しては「ロクにテストをしないで」スタートさせたということにあるようです。おそらくは、システム間のデータ受け渡しの処理能力に差がある中で、様々なデータ件数の上限に引っかかって、エラーで落ちまくっているというのが真相でしょう。システムの構築過程で筋の悪いリーダーが旗を振っていた場合に起きそうなことです。

 この大スキャンダルは連日大きく報道されており、担当閣僚のシベリウス保健福祉長官は辞任が秒読みと言われていますし、オバマの支持率低下の原因にもなっています。この問題に関しては、共和党からの攻勢もあるにはあるのですが、世論や政界全体の雰囲気としては「だからオバマケアはダメだ」という批判ではありません。批判の声は「本当に重要なオバマケアなのだからマジメにシステムを修復してほしい」という切実な声なのです。

 またこの問題とシンクロするように、大スキャンダルとなっている「ドイツのメルケル首相の携帯電話を米NSA(国家情報局)が盗聴していた」という問題も同様です。アメリカの世論も怒っていますが、それは「暴露したスノーデンを野放しにしたからダメ」だとか「アメリカの国益を守るためには盗聴行為をしているという機密をもっと厳格に守るべき」という種類の批判ではありません。

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