支持基盤揺らぐオバマ政権、日本での評価には疑問 - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
ニューズウィーク日本版 / 2013年10月31日 14時20分
そうではなくて、「友好国の首相の携帯を盗聴していた」という行為そのものへの批判であり、「知らなかった」とか「今はやっていない」というオバマに対する責任の追及であるわけです。要するに、リベラルなオバマが失態を見せたから、政敵である保守派が巻き返したのではなく、リベラルに見えたオバマが実は腹黒いことをやっていたこと、医療保険を整備すると言っておきながらその実行力が足りないことへの、いわば「左からの批判」が起きているわけです。
こうしたオバマ批判の流れは、無人機攻撃作戦への批判であるとか、グアンタナモ収容所でまだ捕虜を拘束していることへの批判であるとか、改めてNSAによるネット盗聴への批判という形で強まっていくことも考えられます。その先にあるのは、2016年の大統領選を展望しながらの、民主・共和両党のドラスティックな世代交代の可能性です。
ちなみに、日本では「特定機密保護法」を制定することが日米関係の強化につながるという論調もあるようですが、肝心のアメリカではNSAのネット盗聴にしても、メルケル首相への盗聴にしても激しい批判が渦巻いているわけです。その動向から眼を背けて、まるでブッシュ政権当時のような感覚で「機密保持ができないとテロ情報を回してもらえない」などと思い詰めるのは感覚としてやはりズレているように思います。
最大の問題は、現在のオバマ政権は十分に親日的であることへの認識が低いということです。そしてそのオバマ政権が「左からの批判」でズルズルと退潮していった場合には、アメリカはより若い世代のリーダーが出現して、これまでとは異なった国になっていく可能性があるわけです。その新世代は、民主党であろうと共和党であろうと、よりクリーンで透明性のある情報管理を目指し、世界の警察官であることには更に消極的になり、同時にあらゆる国家間の緊張拡大を嫌悪するような行動パターンを取ってくるでしょう。
現在の日本にある、何も考えずにオバマを叩く習性、機密保護で頑張ればアメリカに評価してもらえると考える姿勢、そうした思考パターンがどうして危険かというと、どんどん世代交代してゆくアメリカの新世代の発想法に対応できなくなるからです。
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