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吾輩は不機嫌である - ふるまい よしこ 中国 風見鶏便り

ニューズウィーク日本版 / 2013年11月12日 10時23分

 だから、新疆でたびたび起こっている暴力的な衝突、あるいはそこへ投入される取り締まり行為に対して、中国政府は簡単に「テロとの戦い」と形容する。天安門の事件も詳細が公表される前から「テロ」と定義づけられ、5人の容疑者が捕まるとテレビや新聞などのメディアだけではなく微博のダイレクトメールまで使って人々に通達した。最近人気の、「Line」によく似た携帯メッセージングサービス「微信」でも、フォローもしていない公安のアカウントからやはり事件収束を伝えるメッセージを受け取ったという人もいる。当局が隅々まで「テロ事件の解決」をイメージ付けようと躍起になっている様子が伺える。

 だから、アメリカのCNNやイギリスのBBC、そしてガーディアンなどがその報道でいつまでたっても「中国当局が『テロ』と称する...」という、カッコ付きの物言いを続けたことに、中国外交部は激怒した。国有テレビ局中央電視台も各国での報道を取り上げて、「自分たちへの攻撃はテロと呼ぶくせに、CNNなど西洋メディアは二枚舌だ」と激しく罵った。傍から見ていると、国家機関がいちいちそんなことに反応するのにも驚くが、そのこぶしの振り上げ具合に、「テロ」という自分たちの判断を西洋諸国に受け入れてほしい、という「熱い」思いが透けて見える。もちろん、西洋メディアはそれぞれ「テロ」との断定に疑問点をあげて論じているのだが、国内向けでは当然そこには全く触れず、逆にムキになって憤る様子には辟易させられる。

 だが、山西省共産党委員会ビル入口で起こった爆発事件では、爆発物に鉄の玉や釘が混ぜられていたことがわかっており、爆発による殺傷力増強を狙った点では十分に「テロ」と呼ぶにふさわしい。しかし、中国人男性が容疑者として捕まったが、今に至るも当局は「テロ」という言葉を一言も使っていない。「テロ」でないとしたら、そんな行為に走ったのはなぜなのか。男性は「社会に対する不満を抱えていた」としか伝えられておらず、実際に何が彼に社会に対する不満を抱かせるに至ったかは公表されていない。

 不満。不機嫌。不愉快。天安門だろうが、山西省だろうが、ウイグルだろうが、とにかく中国全土にそんな気分が充満しているのか。いや、中国国内だけではない、なぜかこのところ、中国の関係者は不機嫌なことだらけのようだ。

 ロサンジェルスで今週日曜日、ABCテレビ前に在米華人が集まり、抗議デモが行われた。きっかけは先月16日に放送されたトーク番組『ジミー・キンメル・ライブ!』。同月前半にシャット・ダウンとなったアメリカ政府を皮肉り、「議員はみんな子供と同じか」という風刺を込めて番組に4人の6歳前後の子供を集めて円卓会議を開いた。進行役のジミー・キンメルが「今日は政治の話をしよう」と子供たちに言い、「アメリカは中国に1.3兆米ドルもの借金がある。どうやったらそれを返せるだろう?」と尋ねた時に、6歳のブラクストンくんが真っ先にこう答えた。「Kill everyone in China! 中国にいるみんなを殺しちゃえ!」

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