1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 国際
  4. 国際総合

吾輩は不機嫌である - ふるまい よしこ 中国 風見鶏便り

ニューズウィーク日本版 / 2013年11月12日 10時23分

 それを受けたジミーは笑いながら「中国にいるみんなを殺す? ...そりゃinterestingな考えだねぇ」と、次の子を指名。「中国の周囲に壁を作って誰も取り立てに来れないようにする」などの意見が出た後、最後にジミーの「お金は返すべきかな?」に一同が声を揃えて「もちろん!」、「中国人を活かしてあげるべきだよね?」にも「もちろん!」と声が上がったが一瞬ブラクストンくんだけが遅れて笑いながら「No〜!」と叫んでいる。するとさらにちょっと年長の女の子が、「彼らをみんな殺しちゃったら、誰もあたしたちにお金を貸してくれないわよ」と説明したところで、ジミーがこの話題を打ち切った。やりとりはYouTubeで観る(中国語字幕付き)ことができる。

 この「中国にいるみんなを殺しちゃえ!」が、番組を見ていた一部の在米華人たちの怒りに触れた。「『中国人を殺せ?』 テレビ局がなんて言葉を流すんだ!」「子供の言葉であっても、大人の進行役のジミーがなぜそれを戒めない?」と、アメリカ各地のABCテレビ局ビル前でデモが組織された。2週間後にジミーは番組で、「ぼくは番組であの子の言い方に賛成しない態度をはっきり示したと思ったが、そう感じなかった人もいるようだ。その結果、不快になった人もおり、そのことに対して申し訳なく思っている。誰かを不機嫌にすることが目的ではなかった」と謝罪。また実際にテレビ局前に集まっていた抗議者の代表とも面談、人々の前にも姿を表して謝罪した。

 だが、その後も抗議行動は続いている、という。規模はすでにそれほどではないが、デモ隊の要求は今では「ABCは謝罪しろ」「番組を打ち切れ」「ジミーは辞めろ」「ジミーをクビにしろ」とエスカレート。さらに中国国内にも件の発言が「中国人を皆殺しにしろ」と翻訳されて伝わり、YouTubeに流れているビデオを見ないままにそれをジミー自身が言ったかのように書かれたブログやネットの書き込みを読んで、さらに激昂する人も出てきている。

 実際には、「6歳の子供の言葉にここまで激昂する必要はないだろう。子供っていうのはそういうものだ」という意見もある。さらに「あの番組に、中国人とアメリカ人の子供に対する教え方の違いを見た。頭から『ダメだ』を押し付けるのではなく、どうしてそう思うのかを尋ね、さらにどうしてそれがダメなのかを説く。そうして考えさせるのだ」という声もある。また「こうして黒人も差別と闘ってきたのだ」とこの抗議活動を正当づける声に対して、「そう。でも忘れるな、黒人はまったく仕事のチャンスもなく、バスの上でも差別される生活から権利を求め続けてきた。一方中国人はこれまで本当の意味で奴隷になったことはない。だが、自分たちの『主人』に対して中国人が堂々と胸を張ってきたことがあるだろうか?」と、ある海外経験豊かな中国人ジャーナリストは書いている。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください