産むべきか産まざるべきか......一人っ子政策緩和がもたらすもの - ふるまい よしこ 中国 風見鶏便り
ニューズウィーク日本版 / 2013年12月2日 21時0分
日本のメディアでは他の中国からの話題を排除してまで行われた、中国の三中全会(中国共産党中央委員会全体会議第3回会議)に関する報道。それが日本の一般読者にとってどこまで大事なんだろう、と思ったのは、わたしだけじゃないはず。でも、伝統的な中国報道の現場では、やはりこうした中国共産党による「何とか会議」は外せないという意識は強く、普通の日本人読者が読んでもよくわからないものがとても重視され続けている。
で、こちら中国でも、庶民の間では会議のことなどもうほとんど話題になっていない。唯一大きく注目されたのが一人っ子政策の緩和。経済体制や政治体制など結局は手が届かない話で、お上のやることを黙って受け入れるしかないが、我が家で子どもがもう1人産めるとなれば話は違う。文字通り「我が家の大事」いや「わが一族の大事」なのだから。
とはいえ、まだ実際の緩和が始まったわけではないが、三中全会の決定を受けて詳細が発表されれば、次々と各地で「親のどちらかが一人っ子の場合、2人目の出産が認可」されていくことになる。それを前に全国の、すでに子どもを持つ母親たちの間で「2人目を産むべきか産まざるべきか」というゆらぎが始まっている。
ある友人は携帯のチャットサービス「微信(WeChat)」上で「知り合いの出産適齢期ママたちの間で大議論が巻き起こっていた」という。「産むか産まないか」は公的の場で他人と議論するようなことではないはずだが、携帯のチャットアプリで情報を交換し合う世代のママたち(1979年生まれ〜)は生活事情も条件も環境もほぼ同じという場合も多く、だからこそ「産む」決断で直面する「問題」をみんなで多角的にシミュレーションできるのだそうだ。
実際のところ、外界でも大きく伝えられた一人っ子政策の緩和は、人口学者たちの多くが異口同音に「多少増えても、爆発的な増加にはつながらない。年間で200万人がせいぜい」と語っている。日本の人口からすれば年間200万人はかなりの数だが、現在13億の総人口を持つ中国からすればわずか0.15%。確かに大した数ではない。
今回政府が「一人っ子政策」緩和を決めた(というか、正確に言うと三中全会は中国共産党の会議なので決めたのは中国共産党なのだが)、その直接の理由は「労働年齢人口の減少が始まった」こと。中国はすでに労働人口のピークを過ぎ、経済メディア『財新網』によると、2012年の労働人口は前年に比べて345万人減少し、このままでは2023年以降は年間平均800万人のペースで減っていくという。だが、来年初めから一人っ子政策緩和が実施されたとしても増えるのは年間最大200万人ならば、実のところ10年後の800万人減というペースを挽回する手段とはいえない。
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