中国と世界、そして日本 - ふるまい よしこ 中国 風見鶏便り
ニューズウィーク日本版 / 2013年12月13日 6時57分
このニュアンスの違いはかなり大きい。
バイデン副大統領は習近平国家主席との会談でもはっきりと「アメリカは東シナ海識別圏を認めない」と明言したと中国メディアでも報道されていて、中国メディア関係者ですら「バイデンはきっぱりと立場を表明した」と言っているくらいだが、自国の航空会社にはその判断を強制しなかったのも事実で、そこが安倍首相の不興を呼んだらしい。だが、日本に同情的な立場を見せながらもアメリカも完全に中国をバシンとはねつけられない「事情」があるわけだ。
バイデン氏の中国訪問は「旧知の仲の習近平氏と膝を割って話した」と言いつつ、共同記者会見では東シナ海問題にはふたりとも一切触れず、結局アメリカ側が別途随行員によるメディアブリーフィングという形で会談の内容が(フランクに、一部を巧妙にぼかしつつも)公開された。このへんのやり方はなんとも回りくどいが、米中お互いに微妙な緊密さと距離感を保ちつつ意見を対立させるのではなく、「顔を立てあった」ことが伝わってくる。
でも、その一方でバイデン氏は米国大使館に米国ビザを求めて並ぶ人たちに「優秀な若者がアメリカに来ることを歓迎する」「アメリカではチャレンジする子どもが受けるのは罰ではなく、表彰ですよ」などと声をかけたという。後者は間違いなく以前、「吾輩は不機嫌である」で触れた『ジミー・キンメル・ライブ!』をめぐる騒ぎを念頭においたものだろう。
見たところ、バイデン副大統領はそれなりに役目を果たして中国を後にしたようだが、日本がその「役目」に不満を持っていると世界に伝えられたことは日本にとって損はなかっただろうか。
世界は、東シナ海防空識別圏が、中国が尖閣諸島の国有化を宣言した日本に標的を絞ったものであることを知っている。さらに、中国がその公告で求めた「識別圏内を飛行する航空機の飛行計画提出」は付近を飛行する航空会社を持つ先進国のほとんどに影響を与えることになり、注目しているのも事実だ。中国のそれはある意味、人命を「人質」にして自分たちが描いた識別圏を世界に受け入れさせることで日本を追い詰めようとしている。海外の報道も、唐突なその「飛行計画提出要求」に日本と同じように違和感を表明している。
だが、その一方でそれらの報道にはその一番の当事者である日本から、世界に向けての正式なアピールがない。もちろん、慌ただしく日本政府が対策を練っていること、日本政府が感情を高ぶらせていることなどは日本の報道などを参考にして報道されているが、そんなふうに世界が日本の態度を見守っている中、日本政府は自分たちの言葉でその不満も、その対応策も、その訴えも何も伝えることができていない。世界はただひたすら日本の出方を待っているものの、日本政府はただひたすら対応に追われている......そんな印象を受ける。
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