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中国と世界、そして日本 - ふるまい よしこ 中国 風見鶏便り

ニューズウィーク日本版 / 2013年12月13日 6時57分

 そこに中国は外国メディアを集めて堂々と記者会見を開き、さらに切り込んでいる。日本の世界舞台での広報下手を先読みしていて、その隙を突くようにぐいぐいと自分たちの声を直接外国メディアに載せ(させ)ている。

 最近、中国はこのような「国際舞台へのアピール」を計算した上で意図的に最大限に利用する手法をよく使うようになった。メディアをいかに利用するか、それをどんなふうに自分たちの都合の良いように引き寄せ、そしてパチンと指で弾くか、その手綱さばきについてもさまざまに検討し、また標的にした相手の出方をよく研究して、その裏をかくための策を練り尽くして臨んでいる。一方、中国に東シナ海防空識別圏を突然突きつけられて怒り心頭に達した日本は、そこまで計算している暇はないようだ。

 防空識別圏騒ぎだけではない。マンデラ元大統領の葬儀でも、中国を代表して列席した李源潮・国家副主席はオバマ大統領らと並んで、各国からのそうそうたる列席者を前に追悼の言葉を述べた。つまり、中国は世界に並んでマンデラ氏を高く評価する態度を表明、世界に向けてマンデラ元大統領に敬意を評し、追悼の意を示したのである。これは世界に向けて「我々はその価値観を共有した」とアピールにしたのに等しい。

 だが、ご存知だろうか。その裏で中国は国内のメディア及びウェブサイトに対して、「マンデラ氏の人権、民主問題における言論、特にその写真、ビデオの内容の選択、発表には注意し、マンデラ氏とダライ(・ラマ)の交流、及び台湾に関する内容に触れてはならず、マンデラ氏個人の結婚生活に関わる話題を転載したり、書きたてたりしてはならない」という通達を出しているそうだ。マンデラ氏についてその人権や民主に関わる言論に触れるなと言うのであれば、何を敬っているといえるのか? どんな価値観を世界と共有しているというのか?

 中国は今、世界メディアを利用し、自分たちの姿を世界の人々の目に焼き付けようとしている。自分たちが確実に、世界の注目する出来事に参与し、アメリカやイギリスと同席、同列にいることをアピールしている。その国内での対応とは裏腹に「世界戦略」を進めている。

 米紙『ニューヨーク・タイムズ』が、同紙と経済メディア『ブルームバーグ』の中国駐在記者ら20人余りのビザが今月で切れるにも関わらず、中国政府からはなんの対応もなく、このままビザ切れで中国を追い出されるかもしれない、と伝え、今大騒ぎになっている。さらに先月から、『ウォールストリート・ジャーナル』の中国語サイト、イギリス通信社のロイターの中国語サイトなどがアクセス不能になっており、一方で昨年の開設直後からアクセス不能になっている『ニューヨーク・タイムズ』の中国語版の閉鎖を同紙本部が検討中だとも伝えられている。

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