ビットコイン in 中国 - ふるまい よしこ 中国 風見鶏便り
ニューズウィーク日本版 / 2013年12月23日 23時3分
先にも述べたように、中国人ツイッターユーザーはもともとツイッターへのアクセスをブロックされた社会に暮らしている。つまり、「壁越え」の手段を知らなければ、中国においてツイッターは存在しないのも同然だ。だがそれが実在していることを知っている彼らは、自分たちの目にする日常がそういう「歪んだ」日々であることを実感しているために、逆にバーチャルな世界に対してあまり抵抗感がないようだ。可能性というものに大きな期待と希望を見出している彼らの関心をビットコインが引き出したのだった。
だが、その後ツイッターに出現する中国人が増えるに連れて(つまり「壁越え」手段がかなり普及するに連れて)、そんなコアな中国人ITユーザーが目立たなくなり、わたしの視野からもビットコインの話題は消えていった。それが今年になって、「今やビットコインの最大の取引所は中国で、ビットコインが投機ブームに乗って過熱している」と知って驚いた。1ビットコインの対人民元レートは8月に約600元(現在のレートで約1万円)だったものが700元(同約1万2千円)、1000元(同約1万7千円)とぐんぐんと値上がりし、12月には7000元(同約12万円)を超えた。もちろん、対米ドルレートも同様に上昇したが、実際に12月1日の時点で世界中で取引されたビットコインのうち人民元による取引が60%を超えたというから「人民元パワー」は無視できない(調べてみると、2011年7月の取引では1ビットコインはわずか約95元[同約1600円]だったようだ)。
その過熱ぶりは中国の事情からすると理解できないことではない。まず前述したように「歪曲された現実」からくるバーチャル世界の可能性に賭ける技術者たちの存在の他に、ビットコインを「黄金」や「米ドル」にたとえてみるとわかりやすい。中国の人民元はまだ世界通貨ではなく、中国国内から海外への持ち出し、あるいは外貨への換金は厳しく制限されている。だが、ビットコインはこれまでその規制外にあり、それを人民元で購入し、外国の市場で売ればそのまま外貨を手にできたのである。
さらに、バーチャル通貨なので、そうした外貨との交換が中国政府の金融当局の記録に残らないので、足がつかない。つまり、このところ身分証明や確認が厳しくなってきた中国国内銀行や証券会社の口座管理や税務署のチェックなどにひっかからない。海外への資金送金も簡単だ。もちろん、やろうと思えばマネーロンダリングにも使える。実際に、今年に入ってからの急激なビットコインの値上がりが昨年末から始まった、当局による厳しい汚職捜査の時期とぴったりと重なっている事を考えると、そんなマネーロンダリングがなかったとは言い切れない。
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