ビットコイン in 中国 - ふるまい よしこ 中国 風見鶏便り
ニューズウィーク日本版 / 2013年12月23日 23時3分
もちろんすべてがマネーロンダリングなわけではない。が、政府にとっては前述したように資金の動きがチェックできないというやっかいな代物であり、管理通貨である人民元の流出を招き、またこれが雪だるま式に激化すれば人民元の暴落を引き起こす可能性もないとはいえない。だから、暴騰が始まった頃から中国政府が介入に乗り出す――そして最悪の場合は、情報ソースとしてのツイッターやフェイスブックのアクセスをブロックしたようにビットコインの流通を完全に禁じてしまうだろう――という予測が流れていた。ある程度ビットコインの可能性を信じる人たちはここでブームを静観していたはずだ。
ある意味、それはパチンコ玉やゲームセンターの特殊なコインのようで(そして実際に中国ではかつてポータルサイト「テンセント」が発行するバーチャル通貨「Q幣」が大ヒットしたが、やはりその後当局の規制により「買う」ことはできても「売る」ことはできなくなった)、ビットコインの場合、現金、それも海外通貨と自由な交換ができる分、金融当局が神経を尖らせるのは当然だった。
中国当局が間違いなくビットコインの趨勢を注意深く見守っていることは、11月に中央銀行である中国人民銀行の易鋼・副総裁が「近いうちに中国政府がビットコインの合法性を承認する事はありえないが、個人的にはその特徴に興味を持っており、また啓発的な部分もあり、注目を続けている」と公開の席で述べたことも明らかだ。一般に中国政府関係者が合法性を問われる案件についてこうした「公」と「個」を切り分けた発言をすることはほとんどない。
その言葉は中国政府内にも躊躇があったことを示している。その躊躇とはここでバッサリと完全にブロックしてしまうことで、中国にとって大事な成長産業の一つであるIT業界の発展に打撃を与えるかもしれなかった。あるいは世界がもしビットコインを認める方向に動けば、世界的なバーチャル金融のプラットホーム化に乗り遅れてしまう――世界的な台頭を目指す中国にとってこの二つは冷徹に切って捨てることのできない分野なのである。
だが、ビットコインにはもう一つ、中国政府にとって、そして世界各国の政府にとって現在最もやっかいとされる特徴がある。それはどの国政府もその市場取引に介入する手段がないことだ。米ドルも日本円も人民元もそれぞれの国の中央銀行が介入することである種のバランスが保たれているのは周知の通り。だが、ビットコインには発行元がなく、新しくコインを手に入れるにはバーチャルな世界での複雑な演算の結果、鉱山を掘り起こすように「掘り当てる」のである。そしてその上限は2100万ビットコインとすでに決まっている中で市場で取引される。
この記事に関連するニュース
-
ドイツで居住資格不法取得あっせん組織の大摘発、多くの中国人が強制送還の可能性も―独メディア
Record China / 2024年4月19日 18時0分
-
訂正-焦点:低迷する中国人民元、企業のドル積み上げが下落に拍車
ロイター / 2024年4月18日 8時36分
-
米、世界経済のリスク軽減に取り組む=イエレン財務長官
ロイター / 2024年4月17日 4時16分
-
中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略がプーチンを窮地に追い込む
ニューズウィーク日本版 / 2024年4月3日 16時58分
-
アングル:ビットコインに見劣りするイーサ、現物ETF審査が今後を左右
ロイター / 2024年4月3日 10時20分
ランキング
-
1「プーチンおやじ」の機嫌を取り、「張り子のクマ」ロシアと抱き合う中国の本音
ニューズウィーク日本版 / 2024年4月26日 17時4分
-
2元大物映画プロデューサーの有罪判決破棄 告発の女優ら激怒 米国
AFPBB News / 2024年4月26日 16時3分
-
3「駐日米大使の醜聞もみ消し」 トランプ氏の公判で証言
共同通信 / 2024年4月26日 15時58分
-
4白人警官が拘束の黒人男性死亡=「息ができない」と訴え―米
時事通信 / 2024年4月26日 18時55分
-
5焦点:トランプ氏政治集会の舞台裏、聴衆はなぜ熱狂するか
ロイター / 2024年4月26日 12時59分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください