チャリティ王の世界地図 - ふるまい よしこ 中国 風見鶏便り
ニューズウィーク日本版 / 2014年1月13日 21時31分
TVBは毎年11月にはそんなスターたちが勢揃いする「台慶」と呼ばれる、設立記念日のお祝い番組が放送されるが、メディアはその日が近づくとその裏話で持ちきりになり、放送日には香港中の家庭がテレビに釘付けになるというくらいの人気番組だった。日本で言えば、紅白歌合戦やかつての「新春かくし芸大会」並みのノリだ。誰がどんな衣装を着て、どんな演目を見せてくれるのか、などと人々はワクワクしながら記事を読んでその日を待つ。文字通り盆と正月がきたかのような一大エンターテイメントだった。そんな絢爛豪華な場のクライマックスで硬い表情のショウが美女スターを両脇に従えて現れるのだが、わたしにはこのおじいちゃんが業界の尊敬を集めていることだけはかろうじてよく分かった(ちなみに、香港では日本の紅白歌合戦は旧正月の大みそかに放送されるのが恒例で、これはこれで大人気だった)。
ショウの経歴からもわかるが、ショウ・ブラザーズの全盛期は香港を中心に東南アジアで暮らす華人・華僑たちを結びつける存在だった。その頃の香港は香港生まれでも、香港育ちでもない華人、さらには東南アジア出身の人たちがたくさん暮らしていた。そこにはいろんな「アジアの香り」が漂っていて、それは華人の「ふるさと」中国、あるいは台湾の各都市とも違う。さらにイギリス植民地下の香港は国際的という面から比べても東京にはまったくないムードを漂わせた街だった。
わたしは、そんな香港で東南アジアの華人や華僑たちの視点や価値観に触れる時間を持てたことはありがたい経験だったと思っている。その後急速に台頭する中国と周辺国の様子を中国国内から眺めるようになってからも、華人とは言ってもすでに中国大陸とは違う価値観を持っている人たちが暮らす東南アジアの存在を意識することができたのは、今でも大事な判断材料の一部だ。それは、日本で中国語を学んだわたしがもしそのまま直接中国大陸に留学していれば絶対に知ることはできなかった「アジア地図」でもある。特にイギリス植民地時代における香港は、ここを拠点にして欧米へ、あるいは中国へアジアへ、もっと南へと行き交う人たちのハブ都市だった。そして香港ではこれまたそんな人の流れを狙って、さまざまなバックグラウンドの人たちが自分の出身地やスキルを武器にビジネスをしていた。ショウが最もエネルギッシュだった時代の香港はすべてが転がり続けている、そんな街だった。
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