「テロリスト」の向こうに潜むもの - ふるまい よしこ 中国 風見鶏便り
ニューズウィーク日本版 / 2014年3月6日 16時19分
もちろん、自分がそこでフォローしている人たちの傾向(わたしの場合はジャーナリストなど情報発信に関わる人やアカウントが多い)もあるだろうが、微信には新疆に関して過去読んだことのある記事、あるいはつい最近の出来事をまとめた記事がどんどん流れてきた。そしてそれを転送すると、また友人の中で転送されていく。政府や政府系メディアが自分たちの少数民族政策や新疆政策の失敗、失態に一切触れずに、コトの次第を「無差別」「庶民を標的」「宗教」「犯罪グループ」という簡単な図式へ大衆の怒りを向けさせようとしている時、民間では彼らが隠す現実が伝播されている。
そこに2001年以来、「恐怖襲撃」という言葉が政府によって恣意的に使われてきた事件を何度か経験してきたわたしは、ジャーナリストや情報発信の意欲を持つ人たちの成熟を見た。怒りやその他の感情にかられるのではなく、当局の規制下でいかに現状から目をそむけさせられてきたか、そしてその結果事態は収拾するどころか人々の知らないうちに悪化の一途をたどっていることに気付き始めた人たちがそこにいる。
もちろん、「ネットの一部で流れる情報なんて、結局は規制のせいでそれほど伝わらないじゃないか。13億の中国人がそうだとはいえない」という声もあるだろう。日本のようにその情報が無制限に散開することはたしかに難しい。だが、我々が中国を知ろうとする時、あるいは外国人である我々が中国に触れる時、最も接触する可能性があるのがこうした、都市に暮らし、情報収集に長け、情報に触れるチャンスを持ち、またその情報について考える能力のある人たちであることは知っておくべきだ。
昆明事件は、表面的には政府の報道規制とその後始まった二大政治会議のお陰でメディアのトップページからは外されている。だが、大した話題もなく、また人々が参与できないこの二大会議のお祭り騒ぎの裏で、人々の新疆情勢についての討論が始まっている。
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