第一夫人 - ふるまい よしこ 中国 風見鶏便り
ニューズウィーク日本版 / 2014年3月25日 7時43分
先週末の北京は「やっと春だ!」と叫んでしまうほど気持ちのよい陽気だった。真冬の間にすっかり葉を落とした街路樹に緑が戻ってくるのはもうちょっと先のようだが、すでに青い芽が頭をのぞかしていた。北京名物の綿埃のような柳絮も飛び交い始め、やっとコートを脱ぐことが出来た。とはいえ、調子に乗ると夜間のまだ10度前後の気温に震えることになるのだが。
青空と共にやってきたのは、アメリカのミシェル・オバマ大統領夫人と娘二人、そして彼女の母親のロビンソン夫人だった。彼女が到着するその日にまるでアメリカが大きな空気洗浄機でも送り込んだのではないかと思うほど、懸案のPM2.5の計測値も「ヘルシー」レベルに急低下し、絶好のおでかけ日和となった。そういえば、中国で最初にアメリカ大使館が独自に計測したPM2.5の数値を公開し始めた2008年頃、PM2.5の危害が信じられない人たちが「アメリカが中国を貶めるための陰謀だ」と言っていたことを思い出し、ファーストレディの到来とともにこのPM2.5が晴れるなんて、やっぱり陰謀なのかもしれないと友人と笑ったくらいだ。
夫人が到着すると、翌日の彭麗媛・習近平国家主席夫人との面談に期待が集まった。彭麗媛夫人はもともと中国では有名な歌手である。軍所属の文芸隊歌手だから、中国ではそれなりに敬意を持って語られるタイプの歌手だ。舞台慣れしているだけに「見せ方」を知っていて、昨年来の習主席の外遊に付き添うたびにその華やかな姿を伝える写真がメディアを賑わせてきた。
昨年のアメリカ訪問の際にも彭麗媛のファッションが中国メディアを沸かせたが、その場にミシェル夫人は姿を表さなかった。娘のテスト勉強監督という理由だったが、中国ではさまざまな憶測が乱れ飛んだ。肩透かしをくらった「おらがファーストレディ」への人々の思い入れは相当なものだった。
今回は言ってみればそのリベンジである。彭麗媛にとって初めての、いやはっきり言って中国始まって以来初めての「ファーストレディ外交」の相手が、アメリカのファーストレディなのだから相手にとって不足はない。一人で国賓を接待する立場になる彭麗媛夫人としてもがんばりどころだ。中国の人たちは、2人がどんなファッションを競うのか、ワクワクしていた。
その結果......メディアでは2人が故宮で撮った写真が出回っている。ミシェル夫人はカジュアルっぽいパンツルック、逆に彭麗媛夫人は青空と故宮の赤い屋根に合わせたのか、かっちりとした青いスーツで身体を包み、「ファッション合戦」の期待に応えるようなものではなかった。故宮をバックにしたそのカジュアルさとかっちりさがやはりまだまだアメリカと中国の違いなのだろうな、と見ていて感じた。
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