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天安門事件、25周年 - ふるまい よしこ 中国 風見鶏便り

ニューズウィーク日本版 / 2014年6月8日 19時37分

 その他、イギリス時代から香港政府に使えてきた生粋の公務員であり、民政事務総署長や教育統括司などの要職を務めた王永平氏の姿もあった。そして、これはここ数年特に参会者を感動させる光景として、天安門事件当時にはまだ生まれていなかった中高生が、制服のまま三々五々同級生たちと集まってくる姿がある。彼らの多くは生まれた時から親に連れられて集会に参加していたり、学校やクラスメートとの接触で天安門事件を知り、夜10時過ぎまで続く集会に参加する。学生ネット放送局のメンバーらしい人たちが参会者にインタビューしている様子もあちこちで見られた。彼らはこうして自分たちの手で、香港で行われる集会の意義を伝えているのだ。

 だが、その一方で不審な「参会者」もいた。会場を歩き回っていたとき、ともに黒いTシャツ、ジーンズ姿、やはりともに角刈り頭の男二人が立ち、わたしの後方を見つめ、何かを指さしてこそこそ話しているのが目に入った。その指の先を振り返ると、マイクをつきつけられて何かのインタビューに答えている男性の姿があった。と思うと、角刈りの男の一人がそのインタビュー現場で差し出されたマイクに向かっている男性の顔の正面から距離を取って立ち、おもむろに携帯電話を取り出して連続して写真を撮り始めたのだ。

 じっと眺めていると、その男は数枚分シャッターを切るとその場を離れ、またわたしのそばを通ってさっきの仲間と合流した。わたしが風景を撮るふりをして男に携帯電話のカメラを向けたところ、落ち着かなく周囲に目を配っていた男はさっと顔をそむけた。そして二人の男たちはちょっと先で合流すると、入り口から次々に会場入りする人たちに逆行するように、人ごみの中へと足早に去っていった...

 あれは何だったのだろう。わたしの直感では、彼らは物見遊山で集会の場にやってきた大陸観光客ではない。会場ではまだ他の観光客たちがのんびりとあちこちカメラを抱えている。一見さんの大陸観光客は噂を聞いて好奇心をもってやってきても、必ずしも集会には参加しない。彼らの心には日頃から国内で植え付けられた恐怖心があるからだ。だが、さっきの角刈りの男たちは揃って大会主催者が参会者に呼びかけている黒いTシャツを身につけて会場入りし、参会者の顔をわざわざ撮り、去っていた。いや、去っていったのはじっと見ていたわたしの視線に気づいたからかもしれない。もっと人だかりがしている各人権団体が設けた露店を冷やかす人たちの顔を撮りに行ったのかもしれなかった。

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