天安門事件、25周年 - ふるまい よしこ 中国 風見鶏便り
ニューズウィーク日本版 / 2014年6月8日 19時37分
こうした、中国と香港を切り離して考え、中国に影響を与えることよりもまず香港のための施策を進めていくべきだとする「本土派」と言われる人たちは、黄氏のように人気を集める議員や言論人を中心にじわじわと香港で勢力を伸ばしつつある。実際に昨年初めて開かれた本土派集会は500人余を集めただけだったのが、今年は大きく増えた。「このちっぽけな香港が巨大な中国にどんな影響を与えられるんだ? 支聯会は25年間、天安門事件に関わった人たちへの名誉回復を求め続けているが、オレたちはもう疲れた。形式主義はもういい。もうオレたちは中国政府にはすがらない。香港をオレたちの手で守る。それだけだ」という主張を繰り返している。
実際に支聯会が主催したビクトリア・パークでの集会参会者の中からも、そこに掲げられたスローガン「平反六四、戦闘到底」(天安門事件の名誉回復のため、徹底的に戦う)に対して、「なぜ中国政府に対して名誉回復を『お願い』するのだ? 我々自身が天安門に当時集まった人たちの尊さを認めれば良いことだ。支聯会はまだ中国政府に期待を抱いているのだろうか」という声も挙がっている。確かに、「平反」(名誉回復)という言葉自体、中国共産党が使う特殊な言葉や概念である。わざわざ党や政府の評価改善を求めることは党や政府の正当性を認めることになるのではないか? そんな疑問は香港の現状を考えれば無理がないことではない。
香港は2017年に初めての特区行政長官普通選挙実施を控えている。しかし、その制度づくりに関する中国中央政府のあれやこれやの干渉をめぐって大きく揺れている。「一国二制度」と言いながら、法と国家の秩序や国体の統一性などを理由にじわじわとその成り行きを自分たちの意のうちに収めようとする中国政府に対して、ほとんどの香港の人たちはすでに反感以上の苛立たしさを感じており、それが中国と自分たちを切り離した本土派の人気につながっているのだ。だが、「ちっぽけな香港」が「巨大な中国」にどうやって抵抗できるのか、その課題は本土派にとっても支聯会のような民主派にとっても同じなのである。
四半世紀を経て、中国はどうなっていくのか、そして香港はそれとどう付き合っていくのか。まだまだ緒は見えないままである。
*
<編集部より>ふるまいよしこ氏の「中国 風見鶏便り」は今回で終了します。3年間ご愛読ありがとうございました。
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