プーチンは「狂人」か、策士か
ニューズウィーク日本版 / 2015年4月27日 12時3分
世界各国の首脳と大衆よ、常に私のことを気に掛けよ──。そんな願望を抱いたリビアの独裁者、故ムアマル・カダフィは賢い戦略を展開した。頭がおかしいふりをして敵陣営を攪乱し、不安に陥れたのだ。
同様の戦略を実行していると見受けられるのが、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領だ。近頃のプーチンは鬱状態が噂されたり、現実を見失っているようだったり、公の場から姿を消してしまうこともある。
「予測不可能な人間に見せ掛けるのは合理的な行動だ」と、最近までモスクワ駐在大使を務めていた人物は指摘する。「プーチンを『予測不能な男』に仕立てて欧米に恐怖を与えるのが、ロシアの戦略だ。トップの座に頭のおかしい人物がいるとなれば、その国が持つ核の脅威は別次元のものになる」
実際、プーチンは2年ほど前から、ロシアの軍事力行使を世界に意識させることに成功している。米スタンフォード大学の名誉教授で核リスクが専門のマーティン・ヘルマンによれば、欧米はいまだにプーチンのゲームに振り回されている状況だ。
「プーチンは核兵器を切り札にしている。その気になれば1時間以内にアメリカを消滅させられる、と。ロシアは単なる地域大国ではなく、世界の超大国だと認めさせるためだ」
こうした作戦は過去にも功を奏している。カダフィは核開発計画を国際社会との交渉材料に使った。北朝鮮も、同じ邪悪なトリックを駆使している。
狂気を演出して不安をあおるのは、実は核戦略の重要な要素だ。ベトナム戦争当時、リチャード・ニクソン米大統領は側近に「狂人理論」を語った。「戦争を終わらせるためなら、ニクソンは何をするか分からないと北ベトナム側に思わせたい」と。
95年には、米戦略軍が機密文書でこう勧告している。「冷静で理性的な相手だと思われれば不利になる......重大な国益に対する攻撃を受けたら、アメリカは理性をかなぐり捨てて復讐する。そんな国家像を、あらゆる敵国にアピールするべきだ」
「鉄の男」で社会病質者
理性を捨てて復讐する──まるで今のプーチンだ。当然ながら各国の政府や情報機関は、この謎めいた指導者を理解しようと躍起になっている。
2月には、プーチンを分析した米国防総省内のシンクタンクの報告書が公開された。08年に行われたこの研究は、プーチンにはアスペルガー症候群があると結論付けている。
アメリカでこの分野の権威は、言わずと知れたCIA(米中央情報局)だ。同局の「性格・政治行動分析センター」は、現地の外交官の観察報告や演説内容などの情報を収集・分析して、各国指導者の性格プロファイルを作成した経験がある。
この記事に関連するニュース
-
ベトナム最高指導者の国葬 後継体制は不透明…米・中露間の等距離外交に変化は
産経ニュース / 2024年7月26日 18時2分
-
ニュースの核心 トランプ氏、きょう銃撃後初演説 大統領復活ならアジアに重点シフト、日本に「憲法改正」迫るか 鍵握る〝強硬派〟バンス氏
zakzak by夕刊フジ / 2024年7月19日 11時34分
-
トランプもバイデンもイスラエルを支援する理由 聖書と冷戦が生んだ米国とイスラエルの同盟
東洋経済オンライン / 2024年7月17日 9時0分
-
ウクライナが核攻撃されれば米国はどう報復するか 通常兵器で直接攻撃も、ロシアの演習で高まる緊張
47NEWS / 2024年7月8日 10時30分
-
「アメリカの同盟国だから、中国は日本を攻撃しない」は甘い…ロシア・ウクライナ戦争でわかった「核抑止」の現実
プレジデントオンライン / 2024年7月4日 9時15分
ランキング
-
1銃撃現場で「再び集会を開く」 トランプ氏投稿、時期言及せず
共同通信 / 2024年7月27日 8時4分
-
2黒人生徒を「奴隷オークション」、南ア学校で人種差別的いじめか
AFPBB News / 2024年7月27日 11時7分
-
3パリ五輪開会式の五輪旗の掲揚で〝ミス〟 上下逆に「恥ずかしい瞬間生み出した」
産経ニュース / 2024年7月27日 14時45分
-
4佐渡金山、世界遺産に登録決定 強制労働主張の韓国同意
共同通信 / 2024年7月27日 14時40分
-
5パリ五輪開会式成功も戦争の影落とす イスラエル選手団にブーイング、テロにおびえる市民
産経ニュース / 2024年7月27日 11時29分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください