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TPPは参加国の利益を損なう

ニューズウィーク日本版 / 2015年5月21日 18時21分

 ベトナム政府は乳幼児用粉ミルクの価格上昇を抑えるため、卸売価格の上限を設定したい。だが米通商代表部(USTR)はそれを愚策と呼ぶ。

 USTRは毎年、自由貿易を制限する外国の政策や慣行をまとめた「外国貿易障壁報告書」を大統領と議会に提出する。2015年版では、ベトナムの政策をはじめ、TPP(環太平洋経済連携協定)の交渉参加国が公共の利益を守るために導入した政策の数々が槍玉に挙がっている。

 オバマ政権は繰り返し、TPPは参加国の公共政策を制限しないと保証してきた。しかし、400ページ余りに及ぶUSTRの年次報告書は、この保証と相反するTPPの真の狙いを公然と認める内容になっている。

 焦点の1つは食品表示だ。ペルーでは、砂糖、食塩、飽和脂肪酸の含有量が基準値を超える食品に警告表示を義務付ける法制化の動きが進んでいる。同様の法律はベトナムにもメキシコにもある。チリも、基準値を超える脂肪、カロリー、砂糖、食塩を含む食品に警告マークを義務付ける法案を可決した。この法律が施行されれば、チリに輸出されるアメリカの加工食品の80%、およそ3億1240万ドル相当が規制対象になるとUSTRは警告する。

 表示義務付けは消費者により多くの情報を提供し、「健康に良い選択」を可能にするための制度だと、国際的な消費者団体「コンシューマーズ・インターナショナル」サンチャゴ支部のヒューバート・リンダーズは説明する。外国製品を締め出す意図はなく、「食品メーカーに改善を促す」効果が期待できるという。

「どこの国でも、国民の健康を増進し、医療費を抑制するのは政府の務めだ」と、リンダーズは訴える。こうした批判に対して、USTRはコメントしなかった。

 環境保護政策も貿易障壁だ。ベトナム政府は12年、有害廃棄物の輸入を禁止する行政命令を出した。対象となるのは使用済みの鉛バッテリー、回路基板、プラスチック、フロンを冷媒にした冷蔵庫などだ。フロンはオゾン層破壊物質に指定され、「モントリオール議定書」で段階的な廃止が決まっている。にもかかわらず、USTRはこの行政命令にもクレームをつけた。さらに、メキシコ政府が省エネルギー推進のために導入した家電製品の表示義務も、「煩雑な手間と高いコストを強いる」悪しき規制だと主張している。

 プライバシー保護も同様だ。マレーシアでは13年に、企業が本人の承諾なしに顧客の個人情報を収集することを禁じた画期的な法律を施行したが、USTRによると、これも貿易障壁になる。カナダのノバスコシア州とブリティッシュコロンビア州は、公共機関が管理する個人データの国外持ち出しや国外からのアクセスを禁じているが、USTRはこの制度も問題にしている。

「プライバシーを守るための規制に文句をつけられては、黙っていられない」と、市民団体「カナダ人評議会」のスジャータ・ダイは怒る。

 このほかUSTRが挙げる貿易障壁には、食品の保健機能表示に関する日本政府の「煩雑な規制」や、メキシコ政府が「病害虫の防除のために」アメリカ産の桃、ネクタリン、杏の検査を強化したことなどが含まれる。

 オバマ大統領は今月初め、スポーツ用品大手ナイキの本社を訪れ、TPP支持を呼び掛ける演説を行った。ここでオバマがTPPを「歴史上最も進歩的な貿易協定」と呼んだのはお笑いだ。

コール・スタングラー

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