被爆70年の日米の核軍縮政策を考える - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
ニューズウィーク日本版 / 2015年8月7日 18時0分
そして今年は実現しませんでしたが、「オバマ大統領の広島・長崎献花」についても、任期の最終年にあたる来年、2016年8月にはより実現に向けた環境が整うように思います。そのためにも、今年12月に、安倍首相による「真珠湾献花」を実現させたいところです。これはジャーナリストの松尾文夫氏が長年提唱し続けている「相互献花外交」に他なりません。
「プラハ演説」後のずいぶん長い間、遅々として進まないように見えた「オバマ大統領の核軍縮政策」ですが、仮にこのイランとの合意について、議会で批准されれば歴史に残る功績になると思います。
さて、一方の日本政府の動きですが、安倍政権に関して言えば、例えば2013年の9月26日に、安倍首相が参加中であった第68回国連総会の「核軍縮に関するハイレベル会合」で行った演説が思い起こされます。
まずなんと言っても、この演説では安倍首相は「非核三原則」の堅持を国際社会へ向けて強く宣言しています。また、2020年に東京でオリンピックの開催が決定したことに触れ、この東京五輪の期間中に広島・長崎の平和式典が行われることから「世界の皆さんと平和について考えるスポーツの祭典にしたい」とも述べています。
さらに、被爆国の立場から核拡散防止条約(NPT)の第3回再検討会議への強い期待感や、米ロ間で進んでいる核弾頭削減交渉に関して、もっと踏み込むようにというメッセージまで加えていました。また、この時の「国連首脳外交」の一環として、安倍首相は選出されたばかりのイランのロウハニ大統領と会談して、直接本人に対して核兵器開発の中止を求めています。
安倍政権の核軍縮政策に関しては、こうした姿勢が原点にあり、そこに「ブレ」はないと思います。確かに首相となる以前の安倍首相は故中川昭一氏などと共に「核武装論議を禁ずるべきではない」という立場からの発言もしていましたが、政権を担って以降は、現在の第二次政権に至るまで「核軍縮」の立場で一貫していると思います。
日本の、あるいは安倍政権の核軍縮政策に関して、私は今でもまったく「ブレ」はないと思っていますが、ここ数カ月の動きを見ていますと、
1)米欧中ロの対イラン核交渉が合意に達した後も、安保法制の適用事例として(イランを仮想敵とした)「ホルムズ海峡での機雷掃海」の可能性について、首相以下が引き続いて言及しており、イランからの抗議を受けるに至った。
2)安倍首相が強く推進するとした「NPT検討会議」が最終的な合意形成に失敗した際に、最後まで残った対立点が「中東情勢という局所的な問題」に過ぎなかったことが正確に報じられず、世論の中にNPTへの不信が広がるのを放置した。
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