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人間に焦点を当てたサントリー"社史"に心をつかまれる

ニューズウィーク日本版 / 2015年8月7日 19時45分

 しかも本書を読むと、この「72年の夏」が、開高と牧との関係を考えるうえで無視できない時期だったことがわかる。


 結局、開高は「新潮社クラブ」に出たり入ったりを何度か繰り返し、ようやく『夏の闇』を書き上げた。昭和四十六年(一九七一)十月、『新潮』に発表され、翌年三月に単行本として発刊される。(中略)開高文学の中の最高峰との呼び声が高い。そして『輝ける闇』以上に内面に寄りかかって書いた作品だった。(317ページより)



「内面に寄りかかって書いた」部分のひとつが、そこに描写された"実在の女"との関係だ。それを知った牧が激昂したことは、本書にもはっきりと記されている。しかし、牧が我が家を訪れたのは、まさにその渦中にあった時期だということになるのだ。この出来事には、トラブルの渦中にいながらも周囲に対する気遣いを忘れなかった牧の一面が表れているとはいえないだろうか?

 個人的にそんな体験をしていることもあり、「『悪妻だった』と片づけてしまえるほど簡単な問題でもなかったのではないだろうか?」という思いもまた否めないのである。


『佐治敬三と開高健 最強のふたり』
 北 康利 著
 講談社



印南敦史(書評家、ライター)


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