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ママたちの不安を知る、型破りな保育園経営者(2/3)

ニューズウィーク日本版 / 2015年9月10日 16時15分

 もともと夫婦の関係もあまりよくなく、この件でさらに悪化するのは避けたかった。と同時に夫にも相談し、「子どもたちも困っている。もし来月から来られなくなったら、ママたちにしても適当な保育園を見つけるのは難しい」と話しました。そのころ夫はいくつかのマンションを貸し出していて、ちょうど2階のテナントが空いていたので、「じゃあ、そこを使いなさい。1年間だけだ。でも家賃は払ってもらうよ」といってくれました。

 それから、今度は家賃や光熱費などの経費についてママたちと相談しました。その半年というもの、私が無償で手助けし、子どもたちをお風呂に入れ、動物園や遊園地に連れて行った。物を買い与えたこともある。それならいくらか納めるのも当たり前のこと。お金を払ったとしても安心して仕事に向かえる。経費を払えば、もしや日本人の先生を呼んで、子どもたちに日本語教育ができるかもしれない、などなど。物わかりのいい親たちで、さまざまな意見が出ました。

 お金のやりとりが発生すれば、そこはホームスタイルの託児所ではなく、ミニタイプの保育園になります。親たちの意見ももっともで、中国語だけでなく日本語も学ばなければならない。しかも保育の経験のある先生を呼んで教育すべきだ、と私も大いに賛成しました。

 こうして私の初めての保育園が、当時の夫が所有するマンションの2階に開設されたのです。約120平方メートルの広さで、もともと内装は済んでいました。バスルームとキッチンの設置は、夫が資金的援助をしてくれましたが、先生を招く費用〔給料〕や家賃、光熱費は、私たちが捻出しなければなりませんでした。

 私たちの保育園が開園し、その結果は上々でした。子どもは方々からやってきて、場所は東京でしたが、川崎、横浜、名古屋から、最も遠いところでは広島から来た子もいました。いずれも中国人です。経費がなく広告掲載もしませんでしたが、当初はママからママへの紹介で広まりました。預かる子どもは5人からスタートし、半年足らずで20人以上に増えました。その上、24時間対応です。みんな遠方からですし、ママたちは働かなければならず、毎日の送り迎えは不可能です。そこで平日は子どもをこちらに預けて、金曜夜に迎えにくると日曜夜にまた送り届ける、というスタイルが一般的でした。

 初めのころ保育費は安く、食費・宿泊費込みで1カ月1人あたり6万円でした。さらに経験豊かな保育士を招いて、子どもたちにたくさんのことを教えました。私1人では20人以上も見られませんし、夜、1人になるのも怖いので、中国人のヘルパーさんを雇いました。こうして3人態勢で子どもを見るようになりました。彼女たち2人の給料は、計40万円余り。さらに光熱費や家賃を引いて、最後に残ったのが私自身の給料でした。収入を得るとは思ってもみなかったので、それだけでもう満足でした。ママたちが子どもを迎えに来たときのうれしそうな表情を見ると、自分がやっていることは意義があると思ったものです。

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