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パジャマで出社でもOKのほうが、アイデア満載の会社になる

ニューズウィーク日本版 / 2015年10月27日 6時20分

 アイデアも同じことだ。二つの「既存の要素」の予期せぬ結合によって、まったく新しい真理が生まれる。「異なる二つの思想」の出合いがアイデアなのだ。

 たとえばグーテンベルクは、貨幣に文字を刻む打印器とぶどう庄搾機(あっさくき)を合体させて印刷機を発明した。

 ダリは夢と芸術を結合させて、シュールレアリスムを生み出した。

 火と食物を結合させた誰かが、「料理」を始めた。

 ニュートンは、潮の満ち引きとりんごが落ちる現象から重力を発見した。

 ダーウィンは、飢饉(ききん)や伝染病と種の繁栄を組み合わせて考え、進化論を導き出した。

 ハッチンズはアラームと時計を結合させて目覚まし時計を思いついた。

 リップマンは鉛筆と消しゴムを一緒にして消しゴムつき鉛筆を考案した。

 わたしは昔、シカゴのある広告代理店に面接を受けに行ったことがある。ビルに足を踏み入れたとたん、そこがアイデアにあふれた素晴らしい職場だということがわかった。エレベーターを降りると、額入りのこんな言葉がものものしく壁にかかげてあった。
緊急時の避難マニュアル
一、すぐにコートを手に取りなさい。
二、帽子も手に取りなさい。
三、仕事はすべてデスクに置いてきなさい。
四、さあ、陽のあたる戸外でくつろごう。


 まさに「異なった二つの思想」の出合いである。ユーモアと創造性。そのどちらかだけを手に入れるのは難しい。楽しむこととアイデアについても、楽しむことと仕事の出来についても同じことが言える。

 一つ例をあげよう。わたしが広告業界で働きはじめたころは、コピーライターもアートディレクターも、普通のビジネスマンと同じ格好をしていた。男性はスーツにネクタイ、女性はワンピースかスーツだった。

 ところが、一九六〇年代後半に状況はがらりと変わった。セーターやジーンズ、Tシャツ、テニスシューズが職場に進出しはじめた。当時、クリエイティブ部門のトップだったわたしはロサンゼルス・タイムズ紙の取材を受け、ああいう格好で職場に来る人をどう思うか、と聞かれてこう答えた。

「パジャマで出社したって構わないよ。いい仕事をしてくれるならね」

 この発言が新聞に載った翌日、クリエイティブ部門の人間は当然のごとく全員がパジャマ姿で出社してきた。やられた。オフィスには笑いがあふれた。

 何よりよかったのは、その日から数週間、それまでになく仕事が快調に進んだことだ。スタッフが楽しんで働いたことで、生産性が上がったのだ。

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