学歴や序列さえも無意味な「新しい平等な社会」へ
ニューズウィーク日本版 / 2015年11月27日 6時5分
しかし、才能をお金に換えるためには、相当なビジネスインフラが必要であった。巨額なコストをカバーするためには、一定数以上の集客が必須であり、それに合致する体制ということになると、相応の資金力が求められる。
これまでは、才能を生かそうと思った場合、資金を持っている人、豊富なコネを持っている人が圧倒的に有利であった。才能はあるが、資金やコネといったビジネスリソースに恵まれていない人よりも、才能はあまりないが、ビジネスリソースをたくさん持っている人のほうが世に出やすかったわけである。
人にものを教えてお金を稼げる人がごく少数に限られていたのは、こうしたメカニズムによって、教えるという行為と権威、そしてお金が密接に結びついていたからである。
だが、秩序の変化にともない、こうした力関係も変わってくる。
ネットのインフラを使って、自身の持つノウハウをお金に換えるプチ起業家が、今後、急激な勢いで増えてくるだろう。ネット上で集客を行い、ネット上で集まる場所を探し、ネット上で事前決済をすれば、極めて安価に、個人レッスンのビジネスを構築することができる。
やらない言い訳が通用しない厳しい世界
だが、この新しい平等な社会は、甘えを許さない厳しい世界でもある。今までは、仮に成果が出ていなくても、自分はチャンスに恵まれなかっただけだという言い訳ができた。
だが新しい資本の時代は、だれでもあらゆるビジネスインフラにアクセスできる。これは、ほぼすべての人が平等に機会を与えられるということを意味しており、行動しないことに対する言い訳は通用しない。これまでは、資金やネットワークにおいて、持つ者と持たざる者の格差が生じていたが、これからは、アイデアや知識、そして行動力について、持つ者と持たざる者の格差が生じることになるだろう。
ゲーム開発企業であるグリーが、入社試験の代わりに、ネット上でプログラムを作成する課題を出して話題になったことがある。入社志望者は、リクエストに沿ったプログラムを自分で開発し、同社に送って評価してもらうという仕組みである。
当時は、この採用方法について、プログラミングという特殊な仕事だから実現可能と思われていた。しかし、これからは違う。ネット上で公開された課題をこなし、成果物を納入して入社の是非を決める試験はあらゆる分野に及んでくるかもしれない。
これまでの入社試験はあくまで「入社したら仕事ができるだろう」というポテンシャル評価でしかなかった。だがこの試験は、実際にできたかどうかしか問われない。日本はこれまで学歴社会と言われてきたが、従来の学歴採用は典型的なポテンシャル採用だったのである。
新しい時代には学歴の意味すら変わってしまうかもしれないのだ。
<加谷珪一『図解 お金持ちの教科書』抜粋シリーズ>
ニューストピックス「図解 お金持ちの教科書」
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