中国民主活動家締めつけに見る習近平の思惑
ニューズウィーク日本版 / 2015年11月30日 16時30分
なぜなら中国共産党政権には「真の民主」がないからである。
この郭飛雄氏、その後、広東省に活動の拠点を移して民主的活動をやめなかったため、2007年に5年間の懲役刑を受けて、2011年9月12日に出獄したばかりだった。
しかし2013年元旦の「南方週末」事件だけでなく、同年4月にも武漢、長沙、広州など中国の8つの都市で「役人の財産を公開しろ」という運動を同時に起こしたため、その組織的な責任者として、同年8月8日に拘束されたわけである。このときの罪名は「民衆を扇動して公共の秩序を乱した罪」だった。この罪名による最高刑は懲役5年。
ところが今年11月27日、広州天河区法院(地方裁判所)は、検察が起訴していなかった罪名である「騒動を起こした罪」を加えて懲役6年の実刑判決を言い渡したのである。なぜなら彼は新公民運動の有力な推進者だからだ。「南方週末」事件は口実で、真の理由は「新公民運動」なのである。
同時に新公民運動の仲間である劉遠東氏には3年、孫徳勝氏には6カ月の懲役刑が言い渡された。また女性コラムニストの高瑜氏も国家機密を海外に漏えいした罪により5年の懲役刑が26日に決定した。
81歳の「五七老人」鉄流氏(作家)が懲役刑という異常
「五七老人」とは、1957年に毛沢東が発した「反右派闘争」で不当に逮捕された者のうち、今もまだ生き残っている老人たちのことを指す。「反右派運動」というのは、毛沢東が1956年に「言いたいことは何でも自由に言いなさい」と知識人たちに呼びかけておきながら、彼らが寄せた意見が中国共産党や毛沢東の独裁を批判したものであったために、意見表明をした全ての者を「右派」として逮捕投獄した運動である。
その中の一人に鉄流氏(本名:黄沢栄)(1933年生まれ)がいる。筆者の友人だ。
知識人で新聞記者でもあった鉄流氏は1957年に投獄され、毛沢東が死去し文化大革命が終わった後しばらくしてから1980年に釈放された。壮年時代の23年間を獄中で過ごしたことになる。
1957年に投獄された知識人は年長者が多い。獄死しているか、釈放されても高齢だったため既にこの世にいない。
わずかな生存者も年々減っていくため、有志たちが自らを「五七老人」と称して集まり、2008年7月10日から『往事微痕』(過去の傷跡)という文集(小冊子)を作るようになった(この小冊子の表紙画像は『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』のp.301にある)。自分たちの牢獄における生活や投獄前後あるいは釈放された後の扱いなど、ありのままの事実を綴ったものだ。費用は互いの持ち寄りで、出版するたびに筆者も一部もらっていた。鉄流氏の望みは、「いつかこれを日本語に翻訳して、世界の人に、中国で何が起きていたのか、何が起きているのかを知らせてくれ」というものだった。
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