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香港で起こった「革命」はなぜ市民の支持を失ったか

ニューズウィーク日本版 / 2016年2月13日 6時3分

 一方の警察はここまでの騒ぎになるとは予想していなかったようで、現場にいたのは軽装の一般警官ばかり。人数が多い暴徒は警官隊を圧倒。歩道を剥がして投石し、また直接襲いかかって殴打した。ヘルメットも盾もないなか、警官側には暴徒による殴打や投石で多くの負傷者が出ている。殴られて昏倒した者まで出たが、その警官が群衆に飲み込まれそうになった際、空に向かって空砲を撃つ威嚇射撃を行っている。

銃を向ける警官(旺角騒乱の生中継より)

 機動隊の到着後、暴徒たちは旺角各地に散らばり、道路でかがり火を焚いたり、タクシーを破壊するなどのゲリラ的活動を朝まで続けた。ビル密集地帯で火を焚くという危険行為もまた暴徒への批判を高めるものとなった。

 事前の呼びかけがあったため、現地には多くのメディアもつめかけていた。投石、威嚇発砲、かがり火など一部始終が写真、動画におさめられている。暴力行為の記録をやめさせようと、暴徒が記者に暴行するという一幕まであった。警官や記者、暴動参加者など計125人が負傷し病院で治療を受けたが、重傷を負った2人はいずれも警官だ。1人は女性警官で投石によって腕を骨折した。もう1人は威嚇射撃のきっかけとなった男性警官で殴打されて意識を失った。

事件翌日の旺角には暴徒に燃やされたゴミ箱が(筆者知人の撮影)

同じく事件翌日の旺角、投石のためにレンガを剥がされた歩道(筆者知人の撮影)

 パニックになった警官が投石を投げ返すという光景もあったが、暴徒側が先に手を出したことは報道から明らかだ。政府に批判的な野党ですら暴徒側を批判している。2014年に普通選挙実施を求めて学生たちが長期間、抗議の座り込みなどを行った「雨傘運動」の主導者である、学生組織「学民思潮」を率いるジョシュア・ウォンも、自分たちの活動はあくまで平和的なものだとして、暴徒とは一線を画することを言明した。メディアも強く批判している。香港メディア従事者連合会は、記者に対する暴行は報道の自由という香港の革新的価値を踏みにじるものとの抗議声明を発表した。

 今回の事件は当初、「魚蛋革命(フィッシュボール革命)」と呼ばれていた。魚蛋とは魚のすり身の団子で香港を代表するB級グルメだ。屋台を取り締まろうとする警察の横暴が人々を蜂起させたという含意を持つ。しかし暴徒側への批判が高まるなか、「魚蛋革命」という言葉は使われなくなり、暴徒に批判的な「旺角騒乱」という名称が定着している。

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