2016年米大統領選挙とシンクタンク
ニューズウィーク日本版 / 2016年2月19日 18時4分
宮田 大統領選挙に関連して、今日も米国民の多くは政治におけるアイディアの可能性に楽観的でしょうか。言い換えると、現在においても米国民の間でアイディアをもった政治家を好む傾向は観察できるでしょうか。
ベイツ かつてレーガンは説得力のあるアイディアを提示し、人々から支持されました。ロス・ペローも同様でした。人々はペローのアイディアに期待しました。彼らの対極に位置するのが、ジョン・コナリーという共和党の政治家です。コナリーは一九八〇年大統領選挙の共和党候補争いで現在の金額にして三五〇〇万ドルもの大金を投じましたが、最終的に獲得できた代議員はわずか一名でした。コナリーには、人々を魅了するアイディアがありませんでした。
このような傾向は現在においても観察できます。勿論、一部で政治そのものへの不信感はあります。しかし、無名の政治家から一気に大統領にまで上り詰めたバラク・オバマの運動を見れば分かるように、現在においても政治におけるアイディアに楽観的であり、米国民の多くは説得力のあるアイディアをもった政治家に魅了されます。
今回の大統領選挙に関して言うと、ジェブ・ブッシュには資金力があります。しかし、人々を興奮させるような政治家ではありません。ブッシュが共和党候補争いを勝ち抜けるかは疑問です。ヒラリー・クリントンも注意すべきでしょう。泡沫扱いされていたバーニー・サンダースが今や二五パーセントもの支持を獲得しています。サンダースは人々の想像力を掴んでいます。
【参考記事】サンダースを熱狂的に支持する若者たちは、民主主義を信じていない
米国外交と米国世論
宮田 民主党内の一部で、反戦の態度が余りにも強く安全保障について語ることを避けようとする傾向もあり、心配しています。ベイツ先生はどうお考えでしょうか。
ベイツ そのような傾向は、民主党内だけでなく実は共和党内でも見られます。過去一五年あまり、グローバル・セキュリティに掛かるコストのほとんどを米国民が一身に引き受けてきました。その結果、国際社会においてリーダーシップを発揮し続けることに対して米国民の間で疲れが生じています。それはシリア情勢への関心の低さに象徴されていますが、この内向きとも言える風潮は左右両派に見られ、共和党内でも対外的関与に批判的なリバタリアンなどが勢いを得ています。勿論、自分も米国世論の現状について心配しています。
米国のリーダーシップは、明らかに国際社会の平和と安定の礎であり続けてきました。アジアにおける平和と繁栄も、過去六〇年にわたるこの地域での米国の積極的なプレゼンスによって支えられたものでした。そして、二一世紀の国際社会がどういった世界になるかも、太平洋地域における米国のエンゲージメントと同盟国とのパートナーシップに懸かっています。台頭する中国がこの先どこへ向かうかも、我々の対応次第で変わってきます。
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