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「ブッシュ王朝」を拒否した米世論2つの感情

ニューズウィーク日本版 / 2016年2月22日 11時40分

【参考記事】「暴言トランプ」の正体は、タカ派に見せかけた孤立主義

 2つ目は、さらに「パパ・ブッシュ(ジョージ・H・W・ブッシュ元大統領)」の時代にまでさかのぼり、「ワシントンのエスタブリッシュメント(支配階層=既成の政界)」への怒りの感情だ。単にイラク戦争とサブプライムのバブルへの批判だけでなく、オバマの8年もダメ、その前のブッシュの8年もダメ、さらにビル・クリントンの時代は良かったが、そのクリントン一家は嫌い、またその前のパパ・ブッシュの4年もいい時代ではなかったと否定している。

 極端に言えばこの28年間のアメリカを支配してきた「ブッシュとクリントン」の2大ファミリー(とオバマ)について「まとめて拒否したい」という心理----トランプを大勝させ、ルビオ、クルーズという若い世代に期待を寄せるという共和党支持者の心情の核にあるのは、そのような感情だ。

 その「エスタブリッシュメントへの怒り」、そして「過去28年への怒り」は、今回はまず「ブッシュ王朝」を潰すという結果で共和党内ではっきりと示された。一方で、民主党の「サンダース躍進」という現象となってヒラリーを苦しめているのも同じ感情であり、ヒラリーは「過去の実績をアピール」する戦術ではなく未来へ向けての政策論へと主張をシフトする必要を迫られている。

 共和党内では、3月1日のスーパー・チューズデーへ向けて、そうした「エスタブリッシュメントへの怒り」という感情を、このままトランプが「追い風」にできるかがポイントとなる。例えば、ルビオが「新世代の本格候補」というイメージで有権者の「過去への怒り」を鎮めながら支持を拡大できれば、選挙戦の構図は大きく変化することもあり得る。

<ニューストピックス「【2016米大統領選】最新現地リポート」>

《筆者・冷泉彰彦氏の連載コラム「プリンストン発 日本/アメリカ 新時代」》

冷泉彰彦(在米ジャーナリスト)


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