今では「ガイジン」じゃなく「YOU」と言われる
ニューズウィーク日本版 / 2016年2月22日 17時30分
これらは大きな変化だったろう──もし本当に起きていれば。
ぼくの「いつか書きたい記事」のリストに入っていたのが、いま日本橋の上を覆っている高速道路を地下化するという計画についてだ。この計画をぼくが最初に耳にしたのは、一九九八年だと思う。「実現したら記事にできる」と、ぼくは思った。ぼくはまだ、その時を待っている。
【参考記事】「世界一見苦しい街」に隠された美を探して
大きな変化に思えたものでも、振り返ればそれほどではなかったということがある。いま思えば、自分が特派員だったときに、なぜ小泉純一郎が「断行」した郵政民営化を「大ニュース」だと思ったのかわからない。人々の暮らしへの影響を考えれば、「クールビズ」のほうが重要だった。
ぼくが大学を出てからは、イギリスのほうが日本よりもはるかに大きな変化を経験したようだ。いくつか例をあげれば、まずイギリスは大変な数の移民を抱える国になった。外国生まれでイギリスに住んでいる人は八〇〇万人に達しようとしている。この数字は、バーミンガム、リバプール、リーズ、シェフィールド、ブリストル、マンチェスター、レスター、コベントリーの人口を合わせた数の二倍を超える。
この一〇年ほどで、ロンドンの不動産価格は三倍近く値上がりし、若いイギリス人には小さなアパートさえ手が届かないものになった。
同性愛者は法的に結婚し、養子をとることもできるようになった。
貴族院(上院)には、世襲貴族が入れないようになった。
イギリスの「連合」の度合いは以前より緩くなった。ウェールズとスコットランドは一九九七年に、かなりの権限を委譲された。二〇一四年にはスコットランドが、国民投票によってイギリスから独立する寸前までいった。結局は残留したが、スコットランドは新たに大きな権限を手にし、それによって国内の他の地域もより大きな権限を求めるようになるだろう。イングランド人も自分たちだけの問題に対して、より大きな発言権を求めるはずだ。
北アイルランドは、複雑で厄介な和平交渉の末にかなりの安定を勝ち得た。イギリスで最も混乱していたこの地域は、大きな変化を遂げた。
こうしたイギリスの変化の度合いを考えれば、日本の変化が小さいことがわかってもらえるのではないだろうか。
ぼくは変化がつねにいいものだと言っているわけではない(お気づきかと思うが、イギリスで起きている変化にはぼくが快く思っていないものがけっこうある)。事実、日本で多くのいいものごとが変わっていない(あるいは改善されている)ことはすばらしいと思う。たとえば、社会の強い団結心、優れた公共交通網、低い犯罪率といったことだ。
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