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試作すらせずに、新商品の売れ行きを事前リサーチするには?

ニューズウィーク日本版 / 2016年3月25日 15時0分

「さあ、質問を100個ちょうだいね」と質疑応答へ

 起業家精神の説明が終わると、ちょうど予定時間1時間30分の半分を過ぎたところだった。シーリグはここで突如、話を止め、壇上のイスに腰掛ける。無理やりに終えた様子ではなく、最初からそのつもりだったようだ。

 理由は、質疑応答。全体の半分を質疑応答に充てるつもりらしい。シーリグはいつも質疑応答を重視するそうだが、今回、それだけの数の質問が聴衆から出てくるだろうか(もちろん質問も英語だ)。

「さあ、質問を100個ちょうだいね」と、シーリグが促す。

 心配は無用だった。1人、また1人と手が上がる。「日本の教育制度の中で育ってきた自分はクリエイティブではない。どうすればいいか?」といった質問や、「大きな組織ではインベンション・サイクルに邪魔が入ると思う。どうやって避ければいい?」といった質問。「どうすればもっと良い質問ができますか?」という"クリエイティブな"質問もあった。

 思いがこもっているがゆえに――あるいは拙い英語力ゆえか――、的を射ない質問も一部にあったが、シーリグはうまく意図をくみ取って答えを投げ返す。結局、途切れることなく16人が質問をして、後半の45分もあっという間に過ぎていった。

 シーリグは著書で一貫してこう主張している。クリエイティビティやイノベーションは、生まれつきの才能ではなく、誰もが身につけられるスキルだ――。「起業後進国」とも呼ばれる日本だからこそ、現状にもどかしさを感じ危機感を抱いている多くの人に、彼女のこうしたメッセージが響くのではないだろうか。

 少なくともこの日、東京で雨の夜に開催された「夢をかなえる集中講義」の受講生約240人は、そんな人たちだった。TEDトークのような会場の空気をつくり出していたのは、ティナ・シーリグだけでなく、聴衆たちでもあったのだ。

[登壇者]
ティナ・シーリグ Tina Seelig
スタンフォード大学医学大学院で神経科学の博士号を取得。現在、スタンフォード大学工学部教授およびスタンフォード・テクノロジー・ベンチャーズ・プログラム(STVP)のエグゼクティブ・ディレクター。米国立科学財団とSTVPが出資するエピセンター(イノベーション創出のための工学教育センター)のディレクターでもある。さらに、ハッソ・プラットナー・デザイン研究所(通称d.school)でアントレプレナーシップとイノベーションの講座を担当。工学教育での活動を評価され、2009年に権威あるゴードン賞を受賞。

《本誌ウェブ「スタンフォード大学 集中講義」記事一覧》


『スタンフォード大学 夢をかなえる集中講義』
 ティナ・シーリグ 著
 高遠裕子 訳
 三ツ松 新 解説
 CCCメディアハウス


ニューズウィーク日本版ウェブ編集部


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