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プーチン、新しい親衛隊創設で反政府デモに備え

ニューズウィーク日本版 / 2016年4月7日 16時14分

 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は直属の治安部隊「国家親衛隊」を創設し、自身の元警護責任者をトップに据えると発表した。強権支配をさらに強める動きと見て、反政府派は警戒感を募らせている。

 クレムリンは5日夜、プーチンが署名した大統領令を発布した。それによれば、新たに国家親衛隊を設置し、内務省に属する特殊部隊の緊急対応隊と機動隊をそこに統合する。新設の機関は内相ではなく、連邦軍の最高指揮官である大統領の指揮下に置かれるという。

 クレムリンは発布に伴い、関連法案を議会に提出、新設機関
の任務は幅広い範囲に及ぶと示唆した。ロシアには既に多くの治安機関がある。そこに強大な権限を持つ法執行機関が新たに加わるとなると、法の整備が必要で、クレムリンは早急に議会の承認をとりつけたい考えだ。

逮捕状なしで容疑者を拘束

 ロシアでは国内の暴動などに対応する内務省軍に加え、ロシア連邦保安庁(FSB)と国境警備隊が治安維持に当たっている。さらに、チェチェンなど連邦内の共和国や自治州・自治管区の一部も内務省内に重武装の治安部隊を抱えている。

 国家親衛隊はこれらすべての機関と連携して治安維持に当たり、特に連邦政府の要人と重要施設の警護を担当する。逮捕状なしで3時間まで容疑者を拘束でき、家宅捜査を行え、公共のスペースや施設を閉鎖できるなど、特例的に多くの権限を持つ。

【参考記事】モスクワ自爆テロ、さらなる連鎖の予告

 議会に提出された関連法案には、隊員は人命に危険が及ぶと判断した場合、事前の警告なしで銃を発砲できると明記されている。

 プーチンは自身の警護を長年務めた側近ウラジーミル・ゾロトフを国家親衛隊の指揮官に任命、併せて国家安全保障会議のメンバーに加えた。

 クレムリンは、過激派のテロやロシアに対する軍事的な攻撃を防ぐ強力なツールになると創設の意義を説明しているが、市民の抗議を圧殺する機関と見て警戒する声は多く、ソーシャルメディアではさまざまな憶測が飛び交っている。



 反政府派の懸念をさらにかきたてたのは、ドミトリー・ペスコフ大統領報道官の発言だ。国家親衛隊の任務は「社会秩序の維持」で、必要な場合は「違法な」抗議デモの鎮圧にも当たると、ペスコフは明言した。

 反体制ブロガーで、反政府派のシンボル的存在でもあるアレクセイ・ナバリヌイは皮肉なトーンでこうツイートした。「素晴らしい。彼らには捜査権も監督権も監視権も何でも与えよう。どうせなら宇宙全体に目を光らせてもらおう」

 かつてプーチンの政敵として知られたミハイル・ホドルコフスキー率いるオープン・ロシア財団(本拠ロンドン)は声明を発表。創設の真の目的は、反政府デモの鎮圧だと指摘した。テロ対策などには既存の治安機関で十分対応できるはずで、プーチン政権が必要としているのはウクライナの首都キエフで起きたような反政府デモの広がりを封じるツールたというのだ。

【参考記事】ウクライナに出兵するロシアの創造的言い訳

 ロシアの議会で堂々とプーチンを批判するただ1人の野党議員として、幅広い支持を集めているドミトリー・クドコフ議員は、経済の低迷で国民の不満が噴き出すなか、プーチンは政治的な保身のために強固な軍隊を必要としているとフェイスブック上で分析し、こう結論付けた。「これは国家を守る部隊ではない。プーチン個人の親衛隊だ」

デイミアン・シャルコフ

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