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サイコパスには犯罪者だけでなく成功者もいる

ニューズウィーク日本版 / 2016年4月26日 18時0分

 サイコパシーの研究者はサイコパスを探す際に、そうした人々が多く見つかりそうな場所に目を向ける傾向がある。そのため多くの研究は刑務所や拘置所で行われてきた。つい最近まで、サイコパシーに関する理論や調査のほとんどにおいて、犯罪者など、明らかに挫折した人物に焦点が当てられてきたのはこうした理由のためだ。

 だが、サイコパシーの傾向をもつ多くの人々は、刑務所や拘置所にはいない。実際のところ、一部のサイコパスは、大胆さといったサイコパシーの特徴を利用して、職業上の成功を達成している可能性がある。

精神の中核にある異常

「成功したサイコパス」という存在は論争の的だった。おそらくその理由の一部は、多くの学者たちが、そのような実例を見たことがないと主張しているためだ。「成功したサイコパス」という概念自体が非論理的であると言う人もいれば、「成功したサイコパス」という言葉自体が論理矛盾だと主張する人さえいる。

「成功したサイコパス」は賛否のある概念だが、新しいものではない。1941年にアメリカの精神科医ハーヴェイ・クレックリーは、古典的名著とされている著書『The Mask of Sanity(正気の仮面)』の中で、この矛盾した条件について初めて指摘している。クレックリーによると、サイコパスとは、表面的には魅力があり正常だが、その背後に、共感力の欠如と深い異常性を隠し持つ両面的な存在だという。

 クレックリーの目に映るサイコパスたちは、魅力的だが自己中心的で不誠実であり、罪の意識に欠けた冷淡な人々だ。人間に対する深い愛着を欠いており、目的なく人生を過ごしているという。だが、クレックリーはまた、一部のサイコパスたちが、少なくとも短い期間において、対人関係や職業において成功する可能性も示唆している。

 クレックリーは1946年の論文の中で、典型的なサイコパスにありがちなケースについて、以下のように記述している。

「半年の間に、ライバルである20人のセールスマンたちを凌いだり、街で最も魅力的な女性と結婚したり、政界への初挑戦で州議会議員に選出されたりする」

魅力があり活動的、そしてナンバーワンを志向する

 キャサリン・ウィダムは1977年、「施設に収容されていないサイコパス」に関する研究結果を発表した。ウィダムはこうした人たちを見つけるために、ボストンのアングラ系新聞に公告を出し、「衝動的で責任感がないものの、他人を操るのに長け、ナンバーワンを目指している、魅力的で活動的で、楽観的な人たち」を募集した。

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