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サイコパスには犯罪者だけでなく成功者もいる

ニューズウィーク日本版 / 2016年4月26日 18時0分

大学生や一般的な地域社会の人々を対象にした調査によると、大胆さは、緊急事態に介入するなどの衝動的な英雄的行動とある程度結びついていることが明らかとなっている。大胆さはさらに、指導者や管理職のほか、警察、消防機関、危険なスポーツなど特定の職業との結びつきも強い。

大統領とサイコパス特性

 特に大胆さが重要となるかもしれない、ある職業が存在する。米国大統領だ。

 ジョージ・W・ブッシュまでを含む42人の米国大統領の調査で、われわれは伝記作家などの専門家に対し、大胆さの評価を含む、大統領に関する詳細な人格要素をすべて挙げるよう依頼した。そしてこれらのデータを、著名な歴史学者による大統領の能力に関する別の調査と結びつけた。

 その結果、大胆さは、ある程度ではあるが、「より優れた大統領」の全般的な能力と正の相関があるということが分かった。そして、危機管理、政策決定、国民に対する説得力など、大統領の能力に関するいくつかの特定要素もまた、大胆さと結びついていた。この次に大統領候補のスピーチを聞くときには、米国大統領としてどのくらい大胆になれるかについて留意しながら耳を傾けるべきかもしれない。

 興味深い偶然だが、われわれの調査で最も大胆とされた大統領は、トム・スケイヒルとともに壇上にいることを誇りに思うと語ったセオドア・ルーズベルトだ。ある現代の伝記作家は同大統領について、「頑強で力にあふれ、大げさで威嚇的で、粗野に見えるほどの鋭い眼力を持つ、雪崩のような人格」だったと描写している。

 最も大胆な大統領たちが、その人格的な側面において異常で病的だったというわけではない。しかし大胆さに関しては、庶民と比較すると明らかに際立っていた。

 大胆さは、成功につながる一部の行動と相関がある。だが、冷酷さや衝動を上手く制御できないなどの他のサイコパス的な特性は、一般的に、職業的成功とは相関がないか、負の相関があるに過ぎない。

 大胆さは、特定の肯定的な人生の成果と関係しているのかもしれない。だが、本格的なサイコパシーの場合は、一般的にそうではないのだ。

「成功と犯罪を隔てる線」はどこにあるのか?

 サイコパシー的な特性は、社会に適応可能なものなのだろうか? このような「ゴルディロックス(ちょうどよさ)」仮説について調査した研究者はこれまでほとんどいない。さらに、サイコパス特性が長期にわたる現実世界ではどのように影響するかについて、われわれは驚くほど知見を欠いている。

 サイコパスの魅力は酷薄で表面的なところだ。その点を留意しながら、われわれが主張したいことは、大胆さやそれに似た特性は、短期的な成功とは関係があるものの、長期的な成功においては、サイコパスの有効性はほぼ必ず消滅していくということだ。結局のところ、トム・スケイヒルが人々を偽ることができたのも、ある程度の期間だけだった。



Scott O. Lilienfeld, Professor of Psychology, Emory University and Ashley Watts, Ph.D. Candidate, Emory University

This article was originally published on The Conversation. Read the original article.


米エモリー大学心理学教授スコット・リリエンフェルド、同博士課程アシュレイ・ワッツ


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