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サイコパスには犯罪者だけでなく成功者もいる

ニューズウィーク日本版 / 2016年4月26日 18時0分

 ウィダムが募ったこれらの人たちは、塀の中にいるサイコパスたちと似たような性格的特徴を示した。彼らのおよそ3分の2に逮捕歴があった。

 逮捕されるサイコパスと逮捕されないサイコパスの違いは何だろうか? ある程度のヒントが得られるのは、現在ペンシルベニア大学で教鞭を執るエイドリアン・レインが1990年代に実施した調査だ。

 レインの研究チームは、ロサンゼルスの人材派遣会社から、複数の男性たちを。まず最初にサイコパシーの条件を満たす人物を確認してから、一度でも犯罪を犯したことがある13人と、犯罪歴のない26人を比較した。レインは後者の26人を、暫定的に「成功したサイコパス」と呼んだ。

 被験者のそれぞれが、自分の個人的な欠点について述べるように指示され、動画を撮影された。このとき、「成功したサイコパス」と見なされた男性たちには、大幅な心拍数の上昇が見られることをチームは発見した。これは、社会的不安が増進したことを示唆している。こうした男性たちはさらに、衝動的欲求を調節することが要求されるタスクを、より上手く処理した。

 この研究は、一部のサイコパス的人物がトラブルから逃れている理由は、ある程度の社会的不安と衝動管理能力を備えていることだと結論している。

株式市場のサイコパス

 ここ最近、われわれを含む一部の研究者は、特定の職業分野に、顕著なサイコパス的特性が偏在しているという仮説を立てている。例えば、政界や実業界、法執行機関、消防関連、特殊作戦部隊、ハイリスクのスポーツなどだ。おそらくこうした分野を中心として、典型的な「サイコパス」ではないものの、サイコパス的特性を備えた人々が存在するのではないだろうか。

 彼らの社会的な振る舞いやカリスマ性、大胆さ、冒険心、そして感情の回復力が、危機的な状況のときに、他の人たちを凌ぐ能力的な強みをもたらすのだろう。世界的なサイコパシー専門家であるカナダの心理学者ロバート・ヘアーは、次のようなジョークを述べている。「私は、サイコパスの研究を刑務所で行っていなかったとしたら、株式市場で行っていたことだろう」

 エモリー大学におけるわれわれの研究所は、フロリダ州立大学の研究者たちと共同で、大胆さなど、いくつかのサイコパス的特性が、社会において成功する特定の態度の素因となるのかどうかを調査しているところだ。

「大胆さ」とは何を意味しているのだろうか? それは、冷静さと魅力、実際にリスクを取ること、感情の回復力を伴う。いっぽうでそれは、広く使用されるサイコパシーの診断基準で見られる特徴でもある。

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