「5年を1単位」としてキャリアプランを考えよ
ニューズウィーク日本版 / 2016年5月7日 6時35分
前章で述べたように、キャリアの初期は自分で得たいと思うスキルや経験に集中する時期だ。2年経てば、知識と能力がしっかりと詰まった引出しを作れるようになり、それを新たな仕事の機会に向けた自分の売り込みに利用していける。
その時期はもう過ぎてしまったという人も心配は無用だ――希望するスキルを身につけるのに遅すぎることはない。社会人になって5年、 10 年、それ以上経っていても、自分で必要だと思うスキルと経験を得る計画を立て、希望するスキルを2年間でできるだけ多く獲得するようにしよう。
キャリアアジェンダ――目標設定と行動計画
第1章でも軽くふれたように、今日のビジネス社会では、今までにないキャリアプランニングのアプローチが必要だ。私が就職した頃とは違い、今の若いビジネスパーソンは同じ会社で勤続 25 年から 30 年を目指す必要はない(同時に、ほとんどの人は以前の平均よりも退職年齢が遅くなっている)。むしろこれから就職するなら、5年を1単位として、6単位から8単位をそれぞれ別の会社で働くキャリアプランを考えたほうがいい。
【参考記事】学歴や序列さえも無意味な「新しい平等な社会」へ
もし勤務先が改革を重視し、技術革新を標榜して魅力的なキャリアを提案する企業なら、その会社で2単位から3単位を続けて働く場合も考えられる。だがほとんどの場合は、パフォーマンスや権限、報酬、影響力をできるだけ高めるために、生涯のキャリアを通じて最低でも3回から5回は勤務先を変えるつもりでいるべきだ。就職後しばらく経つ場合で、あと 10 年から 15 年は働くつもりなら、少なくとも2、3回は転職することを考えるべきだ。
理由を説明しよう。
キャリアの基盤(仕事のコンテンツ、報酬、影響力、役職など)をできる限り充実させるには、興味のある業種のトップ企業で働いたほうがいい。ただ今日の経済環境では、企業は技術革新と数年ごとの企業改革に全社一丸となって全力で取り組まない限り、業界リーダーの地位を保つことはまずできない。多くの企業は財務的・文化的制約のために、トップ企業に留まることができなくなるのだ。
キャリアアジェンダとは、キャリアの大きな目標と達成までの行動計画だ。キャリアアジェンダを考えるなら、身につけたいスキルと、それをできるだけ短期間で獲得できる方法を考えてみよう。前章で述べたように、キャリアの1単位目では業種に関係なく、戦略的スキルを身につけるよう努力すべきだ――基本的なマーケティングと営業、プレゼンテーションのスキル、基本的な財務の知識、戦略プランニングと人事管理の多少の経験である。こうした戦略的スキルがあれば、新しい分野で特定の専門知識や技能の習得が必要とされるのに応じて、自分の付加価値を高めていくことができるだろう。ブロックを積み上げるようにキャリアを構築していくこのアプローチはぜひお勧めしたい。就職時に憧れの仕事に就きづらい経済状況ではとくに有効だろう。
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