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南シナ海仲裁裁判に台湾が横やり、裁定遅延の恐れも

ニューズウィーク日本版 / 2016年5月11日 11時4分

 台湾の当局に近い団体が、南シナ海の領有権をめぐりフィリピンが中国を相手取って起こした国際仲裁手続きに対して、横やりを入れている。台湾にも主張する権利があるとの政府見解を強調する陳述書をオランダ・ハーグの常設仲裁裁判所に提出したためだ。

 異例とも言えるこの陳述書提出は、国連海洋法条約(UNCLOS)の下でフィリピンが申し立てた画期的な裁判で、常設仲裁裁判所が最終的な裁定を下す矢先の出来事だった。こうした動きにより、2カ月以内に下されるとみられていた裁定が遅れかねないばかりか、悪化する南シナ海の領有権問題がさらに複雑化する恐れもある。

 同裁判所は先月、台湾が国連に加盟してもいなければ、UNCLOSにも署名していないにもかかわらず、台湾当局系の「中華民国国際法学会」による陳述書を認めたと、司法筋と外交筋がロイターに明らかにした。

 台湾からの数百ページに及ぶ証拠を検討するだけでなく、判事はフィリピンと中国からさらなる情報を求めていると、この案件に詳しい複数の司法筋は語った。

 フィリピン政府は、実質的に南シナ海全域に関する権利を主張する中国に対し、南沙(英語名スプラトリー)諸島は島ではなく「岩礁」や「環礁」などであり、故に200カイリの排他的経済水域(EEZ)は当てはまらないなどと反論している。

 台湾が実効支配する太平島はスプラトリー諸島最大で、一部の専門家は島としての地位と経済水域を同島が最も主張できると考えている。ブルネイが付近の海域を主張する一方、スプラトリー諸島は中国、ベトナム、マレーシアも権利を主張している。

 台湾当局者は、太平島は自然に人が居住できない「岩礁」であり、故に島の地位もEEZも主張できないとしたフィリピンの陳述書にいら立っている。



 さまざまな政府報告書や声明を証拠として引用し、中華民国国際法学会は常設仲裁裁判所に提出した陳述書のなかで、「太平島が人の居住やUNCLOSの下で経済活動を維持することが可能な島であることは明白だ」と主張している。

 ロイターは常設仲裁裁判所に書面で質問を送ったが、回答はまだ得られていない。コメント要請に対するフィリピン外務省からの返事もなかった。

「先祖の所有地を守れ」

 台湾のこうした動きは、南シナ海で米中間の緊張が高まるさなかに行われた。中国が人工島建設を進める一方、米国は哨戒活動や軍事演習を強化するなど、両国は同海域の軍事化を互いに非難し合っている。

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