米国とロシアはシリアのアレッポ県分割で合意か?
ニューズウィーク日本版 / 2016年6月5日 10時30分
憶測の域を脱しないかもしれない。しかし、6月に入って、米国とロシアは、シリア、とりわけアレッポ県の分割で合意したかのように軍事的攻勢を強めている。
アレッポ県の現況
アレッポ県は現下のシリアでの紛争における最大の係争地である。そこでは、シリア軍、YPG(民主統一党(PYD)が主導する西クルディスタン移行期民政局の武装組織)、ダーイシュ(イスラーム国)、シャームの民のヌスラ戦線、シャーム自由人イスラーム運動やイスラーム軍などのイスラーム過激派、「穏健な反体制派」と目される武装集団、ロシア軍、イラン軍、イラン人、イラク人などの民兵、レバノンのヒズブッラー、米軍主導の有志連合、そしてトルコ軍が入り乱れて、激しい戦闘を続けている。
シリア最大の商業都市であるアレッポ市は、東部をいわゆる「反体制派」(ヌスラ戦線、そしてこれと連携するシャーム自由人イスラーム運動や「穏健な反体制派」)が掌握する一方、アレッポ市西部と同市周辺一帯は、シリア政府と西クルディスタン移行期民政局の実効支配下にある。「反体制派」の「解放区」は、アレッポ市北部のカースティールー街道を事実上唯一の兵站路として市外と通じているのみで、シリア軍、YPG、そしてロシア軍は「解放区」閉塞に向けて攻勢を続けている。
一方、アレッポ市南部郊外はおおむねシリア政府の支配下に復帰したが、アイス村一帯やイドリブ県に近い県西部一帯では、ヌスラ戦線、シャーム自由人イスラーム運動、ダーイシュとの関係が指摘されるジュンド・アクサー機構、トルコが積極支援するシリア・ムスリム同胞団系のシャーム軍団やトルコマン・イスラーム党が「新生ファトフ軍」として糾合、イラン人、イラク人民兵を中心とするシリア軍側と一進一退の攻防を繰り広げている。
アレッポ県北西部は、ヌッブル市一帯をシリア政府が、アフリーン市一帯を西クルディスタン移行期民政局が、アアザーズ市一帯をヌスラ戦線、シャーム自由人イスラーム運動などを基軸とする「反体制派」が、そしてマーリア市一帯をヌスラ戦線以外の「反体制派」がそれぞれ支配する一方、マーリア市以東のダービク村などはダーイシュが掌握している。
アレッポ県県東部は、マンビジュ市、バーブ市、マスカナ市といった中規模都市を支配するダーイシュがもっとも有力で、シリア軍がサフィーラ市東部のクワイリース軍事基地一帯に勢力を伸張、またYPGもユーフラテス川西岸のティシュリーン・ダムを確保している。
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